万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原油価格下落で一件落着になれない悲劇

2008年01月09日 18時25分49秒 | 国際経済
ニュースを斬る 2008年を斬る:原油価格130ドルのシナリオ 巨額マネーの流入で引き続きボラティリティーは高い(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース

 証券市場から商品市場への巨額のマネーの流入は、原油をはじめ、穀物や稀少資源の価格を大幅に押し上げています。この一連の価格上昇は、需給バランスに即した適正価格に落ち着くことで一件落着するようにも思われるのですが、そう期待どうりにはいかない可能性もあるのです。

 それは、あまりに多くの金融機関が商品市場への投機に走ったために、商品価格の値下がりが、巨額の損失を生む可能性があるからです。金融機関の損失が、即、金融不安をもたらすことはよく知られるところです。サブプライム問題での損失に加えて、多数の金融機関が商品市場でも損失を計上することになるのですから、世界経済は、大混乱をきたすかもしれません。原油価格などの値下がりで、企業のパフォーマンスが好転しても、金融部門がカオスに陥っては、元も子もありません。このことは、製造業を生かすのか、金融業を生かすのか、という究極の選択を迫られることになる可能性さえあるのです。

 望ましくない結末が予測されるのですから、金融機関は、やがて自らの首を自らで絞めるような行為は控える方が賢明なのではないか、と思うのです。本当の悲劇は、すぐ目の前にまで忍び寄っているかもしれないのですから。
 

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