万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

金融の使命は産業を育てること

2008年01月22日 18時20分17秒 | 国際経済
日経平均が大幅続落、世界株安連鎖で750円超と今年最大の下げ幅(ロイター) - goo ニュース

 本日、株価が連鎖的な暴落を起こしましたが、その一つの原因として、金融機関が、市場経済のメカニズムにおける自らの使命を、しばし忘れてしまったことにあるように思うのです。

 金融機関のモットーは、自らの持てる資金や資産を最大限効率的に運用することにより、最大の利益を上げることにあります。このため、企業の成長を支える長期的な投資よりも、値上がり益を見込んだ先物取引や投機といったマネー・ゲームに走りがちなのです。何故ならば、短期的に見ますと、後者の方が、はるかに高い収益性を持つからです。しかしながら、実質成長率を高めるためには、前者の金融機能こそ必要不可欠なのであって、後者への傾斜は、投資リスクを高めることはあっても、経済の安定的な成長には害になりかねないのです。もちろん、住宅ローンの証券化という手法は、投資リスクの分散化を意図したものであったのでしょうが、対象が不動産であったことも、バブルの温床を準備したとも言えるかもしれません(日本のバブル崩壊も不動産部門から始まった・・・)。

 かつて、ベンチャー・ビジネスが盛んであった頃、新興企業への投資を惜しまなかった金融機関や投資家は、しばしば、”エンジェル”と呼ばれたものです。バブルの繰り返しを回避するためには、金融機関が頭を冷やし、自らの使命を思い出す、ということも必要なように思うのです。

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