万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

マイノリティーが躍り出た米大統領選

2008年01月21日 18時31分36秒 | アメリカ
米大統領選 西部戦線、オバマ氏苦境 中南米系票、クリントン氏に(産経新聞) - goo ニュース

 アメリカの大統領選挙戦を見てみますと、今回ほど、マイノリティーの存在が、政治の表舞台に躍り出た選挙はないように思います。民主党の有力候補者のオバマ氏とクリントン氏が揃って、共に、”黒人初の”、あるいは、”女性初の”という修飾語が付くことに加えて、州レベルの党員投票でも、ヒスパニック票といったマイノリティー票が結果を左右していると言います。

 アメリカは、もちろん多民族国家ですので、国内には歴史や文化的背景の異なる多様なコミュニティーが存在し、それぞれ、社会的な立場もそれに基づく政治的選択も違っています。このため、大統領にこそ、人種、民族、宗教、さらには、性差をも超えた統合力が求められるのですが、各大統領候補が、マイノリティー票をより多く獲得せんがために、特定の集団に対して優遇策を約束するとなりますと、就任後の政策運営に偏りが生じないとも限りません。国家と下部集団と個人との関係は、今日の政治の仕組みの中では、未だにしっくりとは調和してはいないのです。

 民主党の党員選挙では、マイノリティー票が選挙結果に影響を大きな与えましたが、次なる大統領選挙では、マジョリティーという要素も参加してきます。イデオロギー上の対立が色褪せた今、むしろ、現実社会における相違が選挙を揺るがしていることに、本質的な変化を見てとるべきなのでしょうか。

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