万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

裁判員制度が憲法違反のもう一つの理由

2008年01月16日 17時25分45秒 | 日本政治
「裁判員制度」は国民を否定する愚策―井上薫(弁護士)(2)(PHP研究所) - goo ニュース

 裁判とは、法律の適用を行う仕事であるゆえ、法律の知識がない者がこの権限を行使することは、確かに憲法違反と言えましょう。そうして、裁判員制度にはもう一つ、憲法違反である重大な理由があるのです。

 それは、憲法第80条そのものです。第80条の条文は以下のとおりです。

「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。・・・」

 この条文に従いますと、裁判官と裁判員とは別物であると解釈しない限り、抽選で選ばれる裁判員制度が合法的に成り立つ余地はありません(もし、別物とする解釈が許されるならば、首相や国会議員といった職でも、別の名称で新たに設置できることになる・・・)。裁判員は、事実認定のみを行う陪審員とは異なり、裁判官と同等に、量刑の決定を含めた法律の適用を行う権限を付与されているのですから、憲法第80条に違反することは明らかなのです。

 司法の民主化を唱えながら、電撃的な採択という非民主的な手法で導入したこと自体が矛盾に満ちているのですが、憲法違反が明白な以上、この制度の実施は見送った方が賢明なのではないかと思うのです。

 

 
コメント (1)
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