万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ユダヤとイスラムの呉越同舟

2008年01月14日 18時30分35秒 | 中近東
米メリル、40億ドルの追加資本注入でクウェート投資庁と交渉か(ロイター) - goo ニュース

 政治の世界に目を向けますと、ユダヤとイスラムは、パレスチナをめぐり、激しい対立を続けた歴史を持ちます。今日でも、中東和平はなっていません。その一方で、経済の分野では、両者は最近、頓に接近してきているのです。

 それは、欧米の金融機関が、証券から商品へと投資先を変化させてきたことに起因しています。効率的かつ短期的な収益を求める金融機関が、こぞって原油市場に大量の資金を投入するようになったのです。この結果、オイルマネーによるイスラム金融は、110兆円という空前の資産を記録し(日経朝刊)、サブプライム問題で損失を出した金融機関に対しても、資本提供を行うようになりました。つまり、メリルリンチ社もユダヤ系と言われているようですが、ユダヤ金融が石油価格をつり上げ、イスラム諸国は莫大なオイルマネーを手にし、それが再びユダヤ金融に還流される、という関係が、両者の間で成り立つようになったのです。

 しかしながら、ユダヤとイスラムの呉越同舟の挟間で、製造業を得意とする諸国は、石油価格の値上がりとバブル崩壊による金融不安のリスクを抱えることになりました。果たして、このユダヤとイスラムの共生関係は、長期的に維持されるのでしょうか。もし、この仕組みが固定化されるならば、石油高と資金不足に苦しめられる製造業は、技術開発力を頼りに、サバイバル作戦を展開しなくてはならないのです。 

 

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