万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

財政出動の日米比較

2008年01月18日 18時01分58秒 | アメリカ
ブッシュ大統領、景気刺激策発表へ 株下落など受け(朝日新聞) - goo ニュース

 財政政策を景気刺激策として用いることには議論もあるのですが、少なくとも、同じ財政出動でも、アメリカは国民の個人消費拡大を目指し、日本の場合は政府による公共事業の拡大を図るという違いがあります。

 両国の政策には、「小さな政府」と「大きな政府」ほどの隔たりがあり、それは、アメリカの財政出動が、10兆円に上る減税政策であることに端的に表れています。もちろん、国債発行の増加を伴う場合には、後からの増税もありえますし、財政赤字を悪化させるというマイナス効果もあります。しかしながら、この方法のほうが、公共事業を通した財政拡大政策よりも負の遺産を残さないという点で、マイナス面は小さいとは言えましょう。日本国の場合には、バブル崩壊後、ケインズ主義に忠実なためにか、カンフル剤にしかならない政府支出による”有効需要”創出に大きく傾斜してきました。しかも、採算性のとれない公共事業や無駄な支出は、財政規模を拡大させる原因ともなってきたのです。

 景気回復には、経済の体質や競争力強化こそ重要であることを考えますと、消費の拡大により企業活力を引き出す政策の方が望ましいと言えます。日本国の場合、財政再建をしませんと、いざ不景気となりましても減税政策を採る余地がなくなりますので、行財政改革こそ、最優先に急ぐべきではないかと思うのです。 

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