万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

マネーフロー:天下の回りものは何処へ行く?

2008年07月01日 16時17分05秒 | 国際経済
日本からの所得流出23兆円 07年、原油・原材料高で(朝日新聞) - goo ニュース
 日本からの所得流出額が、遂に世界一になりましたが、このトップの座も、どうやらあまり名誉なことではなさそうです。何故ならば、昨今の原油・原材料高に、日本国も一枚絡んでいた可能性があるからです。

 バブル崩壊から長期にわたって続いてきた低金利政策による資金の流出が、世界的なマネーサプライの過剰をもたらし、サブプライム・ローン問題の遠因となったことは、既に各方面から指摘されています。そうして、次に発生した商品市場への投機マネーの大量流入も、もとをただせば、マネーフローの歪みにあるのかもしれないのです。

 80年代後半以降、日本国では、急速な金融市場の自由化がおこなわれ、転換期における政策的対応の失敗が、未曾有のバブルをもたらすとになりました。日本経済は、未だにこの遺症に苦しんでおり、低金利政策の継続もそのひとつです(各国の政策金利差は、マネーフローの歪みを生む・・・)。今度ばかりは、失敗は許されないのですが、商品投機に関しては、日本政府は打つべき有効な手段は限られており、海外の取引市場に規制を設けたり、投機に走る金融機関の行動が変化しない限り、急激な物価上昇が収まるとも思えません。

 たとえ、23兆円の所得が海外に流出したとしても、それが、海外市場の健全な経済成長につながるように投資されていさえすれば、一位の座も、それ程不名誉なこととはならなかったはずです。やがて、それが、日本国の経済にも還流され、プラスのサイクルとして働くからです。しかしながら、マネーフローの先が商品市場となりますと、原油や原料高として跳ね返り、自らの経済の足を引っ張るマイナスのサイクルとして働いてしまうのです。国際経済に責任を負う国家として、日本国政府は、マネーフローの行く先をウォッチし、国内での投機行為に対する規制や課税強化も含めて(総合取引所構想にも問題点が・・・)、できる限り流れの歪みをただすよう、努力すべきと思うのです。自分で自分の首を絞めるほど、愚かしい行為もないのですから。

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