万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

法整備で不安定化する奇妙な中国市場

2008年07月28日 15時39分51秒 | アジア
中国独禁法来月施行 日本企業に広がる不安 指針なく巨額制裁金の恐れ(産経新聞) - goo ニュース
 普通の国であれば、独禁法が施行されれば、市場の競争秩序が保たれるのですから、大いに安心感が広がり、将来への期待が高まるところです。ところが、これが中国となりますと、全く反対に、不安感の方が広がってしまうのです。

 その理由は、はっきりしています。それは、法治行政にはほど遠く、せっかくに独禁法が制定されたとしても、ガイドラインもないため、中国の競争当局による恣意的な運用がまかり通りそうだからです。しかも、本法律が施行される8月1日以降は、法的な根拠を手にするのですから、権力を振りかざしたい当局にとっては、鬼に金棒です。独禁法違反の廉で、気に入らない外国企業に対して、”政治的”に多額の制裁金を巻き上げることもできるのですから。

 民主集中制に基づく中国の国家制度は、建国以来、権力分立を否定しており、競争当局に、充分な独立性を保証しているとも思えません。もしかしますと、共産党の戦略に沿った政策運営が行われる可能性さえ残されているのです。中国の競争当局に独立性が保障され、中立・公平な市場の秩序維持者となり、さらに司法上の救済制度が設けらない限り、この不安は、完全に払拭されることはないでしょう。中国市場とは、法整備すればするほど不安定化するという、奇妙な市場なのです。

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