万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

チベット問題が炙り出す中国の自己矛盾

2008年07月07日 17時28分21秒 | 国際政治
中国主席、盧溝橋事件の日に来日 反日世論刺激も(朝日新聞) - goo ニュース
 日中戦争の発端となった盧溝橋事件は、70年以上を経た今日において、中国に対して重い課題を付きつけているように思われます。この重い課題とは、侵略の定義と自己矛盾という問題です。

 中国共産党は、建国以来、日中戦争は日本軍によって仕掛けられた侵略戦争であると説明し、盧溝橋事件も、関東軍による謀略と決め付けてきました。どちらが仕掛けたのか、という問題については、中国側の発砲や共産軍などの陰謀とする説もあり、今なお、両国間で見解の一致は見ていません(大杉一雄『日中戦争への道』講談社学術文庫、2007年など)。しかしながら、この”どちらが先に手を出したのか”、という問題はさて置くとしても、中国政府は、少なくとも、自国領土内における他国の軍事力の行使を以って、”侵略”の認定基準としていることは確かなようなのです。

 それでは、この侵略の基準を、中国は自らのチベット占領に適用することができるのでしょうか。チベットの占領に際して、人民解放軍が派兵されたことは明らかな事実ですので、日本国への侵略批判は、そのまま自国にブーメランの如くに返ってくるはずです。しかも、領域内における軍事力の行使に留まらず、中国政府は、チベットという国家そのものを奪い、自らの支配下に置いています。この行為は、日中戦争における日本国の行為よりも、さらに強い侵略性を伴っていたと言えましょう。

 果たして、中国は、チベット問題とどのように向き合うのでしょうか。中国が、自らの侵略性を自覚した時、どのような態度を示すかによって、人類の将来は大きく変わってくると思うのです。

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コメント (2)
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