万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

イラク撤退で内乱?

2008年07月29日 16時13分22秒 | 国際政治
女3人が次々と自爆、バグダッドで28人死亡(読売新聞) - goo ニュース
 アメリカ政府が米軍増強に踏み切ったことにより、ようやくイラクにも安定化の兆しが見えてきた矢先に、再び、かの地では、シーア派とスンニ派の対立によるテロ事件が発生したようです。もし、現在の小康状態が、力でシーア派とスンニ派の対立を抑え込んだ結果であるならば、軍隊の撤退は、再びイラクを内戦の危機に直面させることになるかもしれません。

 アメリカの大統領選挙でも、早くからイラク政策を批判し、同国からの撤退を唱えてきたオバマ候補が、現政権に批判的な有権者から高く評価されているようです。しかしながら、もし、現実問題として、イラクの安定化のために軍事力が必要であるならば、早期の撤退が良策であるとは思えません。アメリカが国威をかけて遂行してきた政策を、最後に”元の木阿弥”にしてしまうことは、アメリカにとっても、イラクにとっても、大きな損失であると考えられるからです。撤退時期を決めるに際しては、イラクの警察組織のみで治安を維持できるか否かを見極め、”力の空白”が内乱を誘発しないよう、十分な深慮が必要なように思うのです。

 なお、この問題は、アメリカに限ったことではありません。本日の新聞記事にも、日本国政府は、国連決議の期限切れを理由に自衛隊をイラクから撤収する方針を決めたと報じられており(本日付産経新聞朝刊)、ここでも”力の空白”による不安定化が心配されます。テロ組織が未だに攻撃の手を緩めぬ現状は、イラク撤退後の混乱を示唆しているとも言えるのです。少なくとも、撤退によりイラク情勢が悪化するならば、国内の党利党略に振り回されるよりも、現地の治安の維持を考慮して、その必要性がなくなるまで(イラク政府が撤退に同意…)、責任をもって駐留を継続すべきではないか、と思うのです。

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