万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

洞爺湖サミット―拡大と深化は両立しない?―

2008年07月08日 15時57分33秒 | 国際政治
参加国もテーマも多過ぎ=独紙が洞爺湖サミット批判(時事通信) - goo ニュース
 ”拡大と深化は両立しない”これは、EUにおいて、加盟国の拡大と機構改革を同時に追求することが難しいことを表現する際に、しばしば用いられてきた言葉です。サミットの現状を観察しますに、ここでもまた、EUと同じ問題が立ちはだかっているように思えるのです。

 グローバルなレベルで解決しなければならない喫緊の問題が増えるにつれ、誰もが、サミットのメンバーは拡大した方がよい、と考えるものです。近年では、インドや中国といった新興諸国の経済成長著しく、これらの諸国を抜きにして問題の解決を図ることは、確かに無理な状況にもなっています。しかしながら、メンバーを増やしたところで、現実的な諸問題に対する合意が簡単に成立するのか、ということなりますと、これもまた、否定的な見解を示さざるを得ません。メンバーの増加と合意の形成は、一般的には反比例するからです。

 共産主義国家である中国に至っては、政治的な価値さえ共有しておらず、もし当国が正式なメンバーとして参加すれば、分裂要因はさらに増えることになります。最悪の場合には、何も決定できず、結局、サミット自体が形骸化してしまう可能性も否定できないのです。サミットに解決能力を持たせるためにはどうしたらよいのか、この問題こそ、サミット最大の問題なのかもしれません。

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コメント (2)
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