万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ソ連の負の遺産―連合国は不拡大主義を貫けるのか―

2008年07月03日 16時36分17秒 | 国際政治
ロシア大統領会見、領土「解決にチャンス」 路線修正も(朝日新聞) - goo ニュース
 第二次世界大戦にあって、連合国側は、枢軸国側を侵略国家とみなし、この大戦を、悪しき侵略国に対する正義の戦いと定義しました。この戦争観は、連合国側が相次いで発した大西洋憲章やカイロ宣言などに見ることができます。そうして、それを保障する行動原則として、”不拡大主義”が打ち出されることになったのです。

 不拡大主義とは、たとえ戦争に勝ったとしても、自らは、領土の拡張や領土割譲を求めない、という原則です。当然に、連合国側で戦ったソ連邦もまた、この原則に従うべきであったのでしょうが、北方領土の占領に見られるように、ソ連邦は、この原則を無視することになりました。ソ連にとっては、第二次世界大戦は、古典的な領土争奪戦に過ぎなかったようなのです。連合国の正義の戦いは、身内において、その根拠を崩されているのです。

 第二次世界大戦を正義の戦い、あるいは、少なくとも侵略を否定する戦いとして人類史に位置づけるためには、ソ連邦の領土拡張主義はあってはならず、これを認めますと、侵略戦争を”悪”とする今日の国際秩序の前提も崩壊してしまいます。ソ連邦からロシアに衣替えしても、この側面は変わりませんし、自らを連合国側と位置付ける中国もまた、チベット侵略という大罪を犯しています。果たして、ロシアは、そうして、中国は、連合国の一員として不拡大主義を貫けのでしょうか?両国の態度は、人類の行方にも大きくかかわっているのです。

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