万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

生活保護は国民納得の制度へ

2008年07月22日 16時56分12秒 | 社会
生活保護、自治体窓口で申請45% 国の抑制策背景に(朝日新聞) - goo ニュース
 生活に困窮している人々を公的に救済することは社会倫理に適っていながら、その一方で、現行の生活保護制度にまつわる問題点も数多く指摘されています。

 その主要な点を挙げてみますと、第一に、政府の財源は限られており、しかもそれは、国民の負担であることです。このため、無制限に支給対象を拡大しますと、他の国民の負担も無制限に重くなってしまいます。

 第二に、生活保護を受ける側の根拠が、曖昧である場合があることです。暴力団員が多額のタクシー代を請求したり、働ける状況にありながら、敢えて支給を受け続けている事例も見られます。

 第三に、生活保護の受給許可が、利権化しているという指摘もあります。つまり、組織的な”こね”があったり、政治家などの”斡旋”がある場合には、申請が通りやすいという不公平があるようなのです。これでは、本当に生活保護を必要としている人々が、むしろ、受給できなくなる可能性があります。

 そうして、将来を展望しますと、公的年金に加入していない無年金者の問題もあります。これらの人々が、高齢期に至って大量に生活保護を受けるとなりますと、深刻なモラルハザードを招くかもしれません(真面目に納めていた人々より高額の給付を受ける?)。

 以上の点から見ますと、現在の生活保護制度がベストであるとは到底言えないようです。これでは、負担を負う側にも受給者側にも不満が残ってしまうからです。そこで、財政負担を軽減しつつ、如何にして公平な制度とルールを造るのか、という問題が提起されることになります。

 例えば、1.生活保護の申請に先立って、職安や生活保護課の窓口での職業斡旋申請を義務づける(高齢者の場合は無理ですが・・・)。2.支援方法を、生活費全額給付型ではなく、公営の集合住宅の無料提供などに切り替える。3.2の集合住宅などでは、食事の無料提供を実施する。4.暴力団など、犯罪組織に属している場合には、脱退しない限り支給を禁じる。5.生活保護の公平性を確保するために、事務の透明性を高め、組織的、あるいは、政治的な”こね”が効かないようにする。6.将来を考えて、公的年金の保険料の徴収を強制化する、といった工夫が考えられそうです。

 生活保護制度が、生活困窮者を助けるために役立ち、かつ、悪用されないためには、国民が納得する制度造りを急ぐべきではないか、と思うのです。

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コメント (8)
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