万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原発ゼロ―産業界無視の政策決定は民主主義に反する

2012年09月15日 15時40分49秒 | 日本政治
原発ゼロ戦略、経済界「国力が低下」「空洞化」(読売新聞) - goo ニュース
 政府は、次期総選挙を意識してか、2030年代に原発ゼロにする方針を、新たなエネルギー政策として決定するそうです。この無謀な政策決定に対して、産業界からは、反対と批判の声が一斉に上がっています。

 反・脱原発派の人々からしますと、産業界の反発は、”安全よりも儲けを優先した利己的な主張”なのでしょうが、自らの利益や立場を表明することは、むしろ、民主的な政策決定過程では、望ましいことです。民主主義の真髄とは、”人民の、人民による、人民のための政府”というリンカーンの言葉に集約されています。この言葉には、自治的な精神が表現されていますが、企業もまた、広義には、この”人民(people)”に含まれているのです。確かに、企業には選挙権はないものの、国庫に法人税を納めていますし、経済の主要な担い手です。しかも、国民の大多数は、企業に所属して所得を得ているのであり、このことは、企業活動が、即、国民生活に影響を与えることを意味しています。それ故に、政府は、産業関連の政策も実施しているのであり、エネルギー政策の分野とは、まさに、企業と国民の両者が直接に利害関係者となる分野の一つなのです。このように考えますと、政府が、”世論”だけを重視し、当事者である企業の意向を無視し、多大な損害を与えるような政策を一方的に決定することは、政府による権力の濫用となります。民主党政権は、表では、自らに都合のよい”世論”を造り出すために、意見聴取会、討論型世論調査、パブリック・コメントなどを大々的に実施する一方で、その裏では、審議会などにあって、意図的に”産業界はずし”を繰り返してきたのです(再生エネ事業者の声だけは聞く…)。産業界の大多数が、原発ゼロに反対しているにも拘わらず…。

 これでは、民主主義の仮面を被った”民主党独裁”であり、人々の声を政治に反映させる、という民主主義の本旨から著しく逸脱しています。人々の中には、企業も含まれることを、忘れてはならないと思うのです。

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コメント (2)
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