万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”領土問題”の定義を明確に

2012年09月25日 15時33分04秒 | 国際政治
尖閣・竹島、国際法で解決を…首相が国連総会へ(読売新聞) - goo ニュース
 尖閣諸島の領有権について、日本国政府は、歴史的にも法的にも明確なる日本領として、”領土問題はない”とする基本原則を堅持してきました。しかしながら、”領土問題”が意味する内容を明確に定義しませんと、不毛な論争に陥ると思うのです。

 ウィキペディア(英語版)には、領土紛争リスト(List of territorial disputes)が掲載されており、その中には、北方領土、尖閣諸島、竹島のみならず、日本国が関わる紛争として、沖ノ鳥島、対馬、タスマニアなどもリスト・アップされています。この顔ぶれを見ますと、紛争地域の認定基準とは、複数の国がある特定の領域の領有権を争うか、あるいは、ある国の領域に対して、他の何れかの国が、その領有権やEEZの範囲などについて、クレームを付けた事実の存在にあるようなのです。沖ノ鳥島は中国が、対馬は韓国が、タスマニアはオーストラリア(オーストラリアのEEZ内での捕鯨)が、日本国を相手取ってクレームを付けていますので、後者の事例となります。仮に、この紛争認定基準に従うとしますと、尖閣諸島もまた、中国がクレームを付けてきましたので、”争いのある地域=領土問題”となります。こうした場合、”領土問題はない”という表現は、正確には、”中国側がクレームを付けてきているが、尖閣諸島は、歴史においても、国際法において、日本国領として確立している”という、日本国側の立場の表明となります。ここに、国際社会と日本国との間に、領土問題の定義に関する”ずれ”を見出すことができます。そして、この”ずれ”に無頓着に、領土紛争リストの基準に従って”領土問題はある”と発言しますと、日本国政府の公式見解を否定したとして、売国奴扱いされることになるのです(私自身も、売国奴扱いされている可能性がある…)。
 

 それにしましても、他国の領域に対して、ある国が、一方的にクレームを付けることができる現状は、国際秩序の平和と安定にとりまして、決して望ましいことではありません。全ての諸国が強制管轄宣言を行うことも一つの方法ですが、ICJの領有権確認手続きを充実させる(応訴拒否を想定し、単独訴訟にも対応)、あるいは、他国の領有権にクレームを付ける場合には、ICJへの提訴を標準手続化するといった制度的な強化が必要なのではないかと思うのです。

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コメント (11)
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