万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

解雇特区-社会保障負担はどうなるの?

2013年10月02日 15時30分33秒 | 日本政治
 産業競争力会議では、特別に解雇に関する規制を緩和する”解雇特区”を提唱しているそうです。企業の競争力アップを狙った構想なのですが、社会保障の負担はどのようになるのでしょうか。

 ”解雇特区”と呼ばれるようにはなりましたが、企業の競争力強化が目的ですので、起業に関しても、新たにビジネスを起こしやすい環境を整えるそうです。この側面からしますと、新規の雇用も生まれるのですから、失業率を低下させる効果も期待できないわけではありません。しかしながら、その一方で、解雇特区のセールス・ポイントは、雇用調整のし易さにあるのですから、不況時や人員の調整期ともなれば、他の地域よりも、即時、かつ、大量に失業者が発生します。解雇特区は、外国人雇用率が高い事業者等が適用対象ともされておりますが、失職後も帰国せずに生活保護の給付を受けている事例も見られますので(それとも、契約時に帰国を約束?)、特区における失業者の増加は、社会保障費の負担増を意味します。企業の立場からしますと、解雇のし易さは競争力の強化に繋がりますが、社会全体から見ますと、企業によるリスク転化によって、コスト高となる可能性もあるのです。

 特区の特例を受けるために、率先して外国人を雇用したり、非正規社員を中心に採用する企業も登場するでしょうから、一つ間違いますと、解雇特区が、生活保護費が歳出の3分の1を占める”大阪市”と化すかもしれません。解雇特区の問題は、企業ばかりではなく、社会保障負担を含めた全体の費用対効果を考慮しませんと、後々、予期せぬ副作用に苦しむことになると思うのです。

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コメント (4)
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