万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ロマ問題―高校生の博愛主義と移民の犯罪

2013年10月21日 15時18分33秒 | 国際政治
ロマ少女の強制送還で論争=各地で高校生が抗議行動―仏(時事通信) - goo ニュース
 フランスでは、ロマの少女が、学校での行事中に拘束されてコソボに強制送還された件について、フランスでの就学を認めることを求める高校生による抗議行動が起きたそうです。その一方で、ギリシャからは、ロマの人に誘拐されたと推測される白人の金髪碧眼の少女が発見されたとするニュースが報じられています。

 ”自由・平等・博愛”のスローガンの下で大革命を起こしたフランスの高校生にとりましては、政府当局が、ロマの少女を目前で、一人だけバスから降ろされて連行される光景は、驚きであったと共に、普遍的であるべき博愛精神に反する行為と映ったのでしょう(確かに、当局の手法には、無神経なところがある…)。高校生たちのロマの少女の運命を思いやる純粋な気持ちは理解に難くありませんが、その一方で、ロマの人々が、人身売買のみならず、スリや窃盗などに関わってきたことは、残念ながら事実ではあります。南欧諸国の観光地に出没するスリのほとんどは、ロマの子供達です。定住地を持たずに放浪するロマの人々と、現地の定住者である一般の人々との間には、犯罪に対する意識に著しい違いがあり、後者と比較して、ロマ社会の犯罪許容度は高いと言わざるを得ないのです。こうした場合、しばしば、博愛主義と人権保障(治安の維持)との間に、深刻なジレンマが生じます。共に普遍性が謳われながら、博愛主義を貫けば、移民による犯罪増加という結果を招きかねないからです。この少女の一家は、難民申請が却下され、県知事から退去命令が出されていたそうですので、許可が下りなかったことには、何らかの問題があったのでしょう。

 高校生の抗議行動は、当局に対する批判に終始していますが、実のところ、この事件は、博愛主義と移民の犯罪との間に横たわる問題について深く考える機会を与えています。博愛主義一辺倒では解決できないことにこそ、この問題の難しさがあるのですから(他の諸国もまた、同様の問題を抱えている…)。

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コメント (8)
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