万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ASEAN結束の戦略的価値-中国の分断作戦に対抗を

2013年10月10日 15時30分40秒 | アジア
南シナ海問題 中国、比の孤立化狙う ASEAN会議、「当事国交渉」米も牽制(産経新聞) - goo ニュース
 スカボロー礁問題にめぐって、フィリピンは、国際法に基づく解決を目指し、中国を国際仲裁裁判所に提訴しました。強き者をも弱き者をも公平に護るもの、それは、法をおいて他にありません。

 ところが、南シナ海問題において法的根拠が欠如している中国は、何としても法による解決を避けるべく、ASEAN諸国プラス3の席でも、フィリピンの孤立化を図っているそうです。フィリピンの動きが他のASEAN諸国に広がれば、パラセル諸島ではベトナムと、スプラトリー諸島でも、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイと領有権を争っていますので、中国にとりましては、不利な状況になると読んでいるのでしょう。そして、領有権に関する対立の有無に限らず、急激に海軍力を増しつつある中国は、ASEAN諸国にとりまして、周辺海域の安全と自国の権益を脅かす、共通の脅威であるはずです。大国が採用してきた古典的な戦略は、敵対する諸国が結束して抵抗しないよう、分断することです。中国によるフィリピンの孤立化は、まさにこの作戦であり、フィリピンを切り離すことで、ASEAN全域に法の支配が行きわたることを阻止しようとしているのです。しかも、大概、こうした分断作戦は、強圧的な軍事力ではなく、甘言や利益提供といった巧妙な手段が用いられるものです。今回の会議でも、中国は、しきりにインフラ支援などを持ち掛け、フィリピンの孤立化を誘導しているそうですが、その甘い言葉の裏には、怜悧な計算が隠れています。

 毛利元就の”三本の矢”のお話のように、大国に対する結束は、強力な対抗策となります。中国が真に恐れているのは、ASEAN諸国の対中連帯なのですから、ASEAN諸国は、目先の利益に惑わされず、長期的なヴィジョンに立って、結束の戦略的な価値を最大限に生かすべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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