本日の日経新聞は、「公的年金成長企業に投資」という見出しで、政府が、公的年金の運用改革の一環として、国内債券から成長企業の株式投資に運用を大幅にシフトとするいう記事をトップに掲載しておりました。この改革、大丈夫なのでしょうか。
第1に心配すべきは、財政への影響です。120兆円の資金のうち、現在、60%を国内債券で運用しているそうですが、このことは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、72兆円ほどの国債等を保有していることを意味します。株式運用にシフトするとしますと、これらの債権を市場で売却する、あるいは、国債の購入を控える、という行動が予測されます。一気に大量に売却するともなれば、国債価格の暴落を起こすかもしれませんし、国債の安定的な保有者を失うわけですから、財政リスクの方は高まります(それとも、日銀が、量的緩和策の一環として買いオペを実施するのでしょうか…)。
第2に、投資先の選別基準としての自己資本利益率重視(ROE)重視と、目的である”成長企業への投資”との間に齟齬があることです。未だ事業が軌道に乗っていない成長企業は、一般的には、高い収益率を達成するには至っていません。ROE重視では、むしろ、将来性の高い企業が、運用銘柄から外されてしまう可能性があります。因みに、ROEのランキングを見ますと、サービス業が上位を占めており、新たな産業育成の観点からも、企業の成長押し上げ効果に疑問があります。
第3に、現在の日本企業のROEの低さは、余剰人員の温存に起因しているとしますと、ROE重視は企業のリストラを加速し、結果として欧米で既に問題視されている”中間層の崩壊”を招く恐れがあります。日本企業の社会的役割を考慮しますと、ROEを用いた”あめとむち”の政策は、企業にとっても、国民にとっても、いささか過酷なように思えます(リストラは、結局、内需の縮小をもたらす…)。また、ROEを重視しますと、東証等に上場している外国企業が優位となるかもしれません。
第4に、仮に、今後、リーマンショックの如き金融危機が発生し、急激な株安に見舞われることがあるとしますと、巨額の損失が生じ、年金の支給にも支障を来すかもしれません。公的年金をハイリスク・ハイリターン型の運営に変えるとしますと、収益力のアップは望めても、安定性を損なう可能性があります。
日本の株式市場への海外からの資金流入が増加した反面、急激な流出による株価下落が懸念される折、日本国の株式市場を安定させるという意味において、GPIFの株式運用は、全面的に否定すべきことではありませんが、予測されるリスクは、事前に排除するなり、対策を準備すべきではないかと思うのです。
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第1に心配すべきは、財政への影響です。120兆円の資金のうち、現在、60%を国内債券で運用しているそうですが、このことは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、72兆円ほどの国債等を保有していることを意味します。株式運用にシフトするとしますと、これらの債権を市場で売却する、あるいは、国債の購入を控える、という行動が予測されます。一気に大量に売却するともなれば、国債価格の暴落を起こすかもしれませんし、国債の安定的な保有者を失うわけですから、財政リスクの方は高まります(それとも、日銀が、量的緩和策の一環として買いオペを実施するのでしょうか…)。
第2に、投資先の選別基準としての自己資本利益率重視(ROE)重視と、目的である”成長企業への投資”との間に齟齬があることです。未だ事業が軌道に乗っていない成長企業は、一般的には、高い収益率を達成するには至っていません。ROE重視では、むしろ、将来性の高い企業が、運用銘柄から外されてしまう可能性があります。因みに、ROEのランキングを見ますと、サービス業が上位を占めており、新たな産業育成の観点からも、企業の成長押し上げ効果に疑問があります。
第3に、現在の日本企業のROEの低さは、余剰人員の温存に起因しているとしますと、ROE重視は企業のリストラを加速し、結果として欧米で既に問題視されている”中間層の崩壊”を招く恐れがあります。日本企業の社会的役割を考慮しますと、ROEを用いた”あめとむち”の政策は、企業にとっても、国民にとっても、いささか過酷なように思えます(リストラは、結局、内需の縮小をもたらす…)。また、ROEを重視しますと、東証等に上場している外国企業が優位となるかもしれません。
第4に、仮に、今後、リーマンショックの如き金融危機が発生し、急激な株安に見舞われることがあるとしますと、巨額の損失が生じ、年金の支給にも支障を来すかもしれません。公的年金をハイリスク・ハイリターン型の運営に変えるとしますと、収益力のアップは望めても、安定性を損なう可能性があります。
日本の株式市場への海外からの資金流入が増加した反面、急激な流出による株価下落が懸念される折、日本国の株式市場を安定させるという意味において、GPIFの株式運用は、全面的に否定すべきことではありませんが、予測されるリスクは、事前に排除するなり、対策を準備すべきではないかと思うのです。
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