万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

香港の民主制度改革-中国は”民主主義の潰し方”を知っている

2014年09月03日 15時39分53秒 | アジア
香港民主派議員27人が否決意向 長官選改革、デモ隊19人逮捕(産経新聞) - goo ニュース
 民主主義国家が大多数を占める国際社会にあって、共産党一党独裁体制を堅持している中国。内外からの批判を撥ね付ける一方で、”民主主義の潰し方”の研究だけは余念がないようです。

 返還に際して「一国二制度」が認められたことで、香港では、曲がりなりにも民主的選挙が実施されていました。しかしながら、ここにきて、中国が行政長官選挙の制度改革案を決定したことで、香港の民主主義に暗雲がたちこめています。報じられるところによりますと、この改革案、立候補に際して推薦要件といった制限を設けることで、民主派の候補者を予め選挙から排除できるというものなそうです。中国本土でも、”選挙”が名ばかりとなるのは、こうした制限が設けられているからに他なりませんが、当局の息のかかった候補者しか立候補できない制度は、民主主義を形骸化することは言うまでもないことです。つまり、表面的には”民主的選挙”を制度として残しながら、候補者の事前選抜により、住民は、事実上、当局から認定された候補者の中からしか撰べないのです(譬えて言えば、赤、白、青、黄色、緑から自分が最も良いと思う色を選ぶのではなく、5つの赤から選ぶだけ…)。このことは、国民や住民の政治に参加する権利が消滅することを意味ています。

 実のところ、現行の民主制度の重大な欠陥の一つは、国民や住民が選択を行う以前の段階で、何者かによって既に結果が決められてしまう可能性にあります。香港の民主制度改革案は、香港の立法院で否決された場合には廃案となりますので、民主派議員は、当法案の成立を阻止することでしょう。しかしながら、民主主義国家を自認している諸国も、足元を見ますと、”事前選抜”の魔の手が伸びていることに気づくはずです。日本国も、大丈夫なのでしょうか。

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コメント (2)
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