万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

スコットランドの運命の選択は如何に

2014年09月09日 15時45分22秒 | ヨーロッパ
 スコットランドでは、独立を問う住民投票を前にして、独立賛成が反対を上回る世論調査の結果も見られ、イギリスの将来像に世界の関心が集まっています。スコットランドの独立志向の強さは、イングランドとの積年の確執は解けてはおらず、民族意識というものは、百年、あるいは、千年単位でも消えることはないこともを示してもいます。

 現英王室がスコットランドのスチュワート朝の系譜を引いているためにか、独立を選んでも同君連合のような形態となるようですが(カナダやオーストラリア…と同じ)、スコットランドが独立を主張する第一の理由として上げられているのは、財政負担の問題です。現状では、スコットランドはイングランドに対して出超の状態にあり、特に北海油田から上がる収益がロンドンの国庫に収まってしまうことには不満があるそうです。独立すれば、スコットランドの財政が潤沢になり、社会保障や社会福祉の予算も増額できるとなれば、独立案が住民を惹きつけるのも不思議ではありません。他のヨーロッパ諸国でも、分離・独立運動が盛んなのは、相対的に商工業が盛んな豊かな地域です。”同族でもないのに、何故、我々の納めた税金が他の地方で使われるのか”という反発心なのかもしれません。しかしながら、実際に、分離・独立が、財政負担の軽減となるかどうかは未知数です。独立主権国家ともなれば、スコットランド政府が独自で防衛、安全保障、外交等を担わねばならず、軍隊や軍備については一定の比率で英国軍から分離・継承するとしても、外交については、各国の首都や主要都市に大使館や領事館を開設し、外交使節等を派遣する必要があります(連邦制という選択もあるのでは?)。また、北海油田も将来的には枯渇しますので、未来永劫にわたってスコットランドがその恩恵を享受し続けるとは限りません。財政的には、期待されたほどスコットランドにとってプラスとはならないかもしれませんが、それでもなお、独立を選択するとしますと、それはスコットランド魂の叫びなのでしょう。

 スコットランドの選択は、イギリスのみならず、他の諸国にも影響を与える可能性があります。以前から、ヨーロッパの議論でも、EUの成立によって民族独立のケースが増えるのではないか、とする予測がありました。もはや、国家に帰属しなくても、EUに加盟していれば、経済的には市場が狭まることなく、政治的には小国としてでも自立できるとする見通しからです。スコットランドの場合、独立後に、改めてEU加盟の手続きを行うとも報じられていますが(ユーロの導入?…)、イングランドと共に歴史を歩み続けるのか、それとも、EUを枠組みとした新たな国家モデルとなるのか、スコットランドの選択から目を離せないと思うのです。

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コメント (6)
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