先日、フェイスブックのマーク・ザッカ―バーグ氏は、議会の公聴会の席で、雨や霰の批判を受けているリブラ構想を擁護するためか、中国人民銀行によるデジタル人民元の発行の脅威を訴えていました。リブラ構想を潰せば、ライバルが消えた中国が発行するデジタル人民元によって世界経済が乗っ取られると言わんばかりです。しかしながら、この主張、いささか自らを買い被っているようにも思えます。
フェイスブックの利用者は、2019年7月の時点にあって全世界で24.14億人を数え、数からしますと中国の人口13億人を遥かに上回っています。海外の華僑人口を含めても人的な規模ではフェイスブックに軍配が上がるのですが、仮に中国自身が、リブラと同様に既存の銀行間決済システムを介さずに国境を越えた送金・決裁が可能となる仕組みを以ってデジタル人民元を発行するとしますと、その脅威は、フェイスブックに優るとも劣りません。否、軍事や政治面まで含めますと、デジタル人民元構想の方が遥かに深刻な脅威を全世界の諸国に与えることとなりましょう。何と申しましても、中国と云う大国が発行主体なのですから。
中央銀行によるデジタル通貨構想は、中国に限られているわけではなく、キャシュレス化が進んでいるスウェーデンもデジタル通貨を発行する計画を温めているそうです。スウェーデンが独自の国際送金・決裁システムまで構想しているか否かは分からないのですが、中国では、アリババ集団の子会社であってアリペイを運営しているアント・フィナンシャルがフィリピンとの間で送金実験を行っていますので、デジタル人民元構想に同システムが含まれるのはほぼ確実です。スウェーデン・クローネは国際通貨とは言い難い点をも考慮しますと、新たな国際通貨システムをめぐる闘いは、リブラとデジタル人民元による一騎打ちの様相を呈しているのです。上記のリブラか、デジタル人民元かの二者択一を迫るようなザッカ―バーグ氏の発言も、こうした現状を踏まえてのことなのでしょう。
しかしながら、よく考えても見ますと、両者が新国際通貨システムの両雄として注目を集めるのは、それが、構想の計画と公表において他に先んじているからに過ぎないように思えます。今日、ビットコインをはじめ、フィンテックの成果として様々な‘仮想通貨’が登場しており、こうした技術は、一部の国や企業が独占しているわけではありません。ネット上の交流サイトの運営を本業とするフェイスブックが早々とリブラ構想に打って出たのも、おそらく、技術的な障壁はそれほどまでには高くないからなのでしょう。デジタル通貨構想は、リブラとデジタル人民元によって独占されているわけではなく、その他の国や企業も参入可能ということになります。
このように考えますと、国際送金・決裁機能をも備えたデジタル米ドルの発行もあり得ると言うことになります。今のところFRBは米ドルのデジタル化に乗り気ではないようですが、仮に米ドルがデジタル化され、かつ、個人向けの即時送金・決済機能をも備えるとしますと、その信用力からしましても、人々は、既に国際基軸通貨の地位にあるデジタル米ドルを選択するのではないでしょうか。乃ち、デジタル人民元の最大のライバルはデジタル米ドルとなるのです。この結果、中国は、先行プラットフォーマーとしてのアドバンテージを失い、世界大に人民元圏を拡げようとする野望や潰えるかもしれません。
デジタル米ドルの圧倒的な優位性からすれば、ザッカーバーク氏は、米議会議員に対して自社への支援を訴えるよりも、中国のデジタル人民元に対抗するために、デジタル米ドルの発行を訴えるべきでした。もっとも、中央銀行によるデジタル通貨発行には慎重に考えるべき様々な面がありますので、国際通貨制度全体に関わる問題は、国際的な議論やコンセンサスの形成が必要なように思うのです。
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フェイスブックの利用者は、2019年7月の時点にあって全世界で24.14億人を数え、数からしますと中国の人口13億人を遥かに上回っています。海外の華僑人口を含めても人的な規模ではフェイスブックに軍配が上がるのですが、仮に中国自身が、リブラと同様に既存の銀行間決済システムを介さずに国境を越えた送金・決裁が可能となる仕組みを以ってデジタル人民元を発行するとしますと、その脅威は、フェイスブックに優るとも劣りません。否、軍事や政治面まで含めますと、デジタル人民元構想の方が遥かに深刻な脅威を全世界の諸国に与えることとなりましょう。何と申しましても、中国と云う大国が発行主体なのですから。
中央銀行によるデジタル通貨構想は、中国に限られているわけではなく、キャシュレス化が進んでいるスウェーデンもデジタル通貨を発行する計画を温めているそうです。スウェーデンが独自の国際送金・決裁システムまで構想しているか否かは分からないのですが、中国では、アリババ集団の子会社であってアリペイを運営しているアント・フィナンシャルがフィリピンとの間で送金実験を行っていますので、デジタル人民元構想に同システムが含まれるのはほぼ確実です。スウェーデン・クローネは国際通貨とは言い難い点をも考慮しますと、新たな国際通貨システムをめぐる闘いは、リブラとデジタル人民元による一騎打ちの様相を呈しているのです。上記のリブラか、デジタル人民元かの二者択一を迫るようなザッカ―バーグ氏の発言も、こうした現状を踏まえてのことなのでしょう。
しかしながら、よく考えても見ますと、両者が新国際通貨システムの両雄として注目を集めるのは、それが、構想の計画と公表において他に先んじているからに過ぎないように思えます。今日、ビットコインをはじめ、フィンテックの成果として様々な‘仮想通貨’が登場しており、こうした技術は、一部の国や企業が独占しているわけではありません。ネット上の交流サイトの運営を本業とするフェイスブックが早々とリブラ構想に打って出たのも、おそらく、技術的な障壁はそれほどまでには高くないからなのでしょう。デジタル通貨構想は、リブラとデジタル人民元によって独占されているわけではなく、その他の国や企業も参入可能ということになります。
このように考えますと、国際送金・決裁機能をも備えたデジタル米ドルの発行もあり得ると言うことになります。今のところFRBは米ドルのデジタル化に乗り気ではないようですが、仮に米ドルがデジタル化され、かつ、個人向けの即時送金・決済機能をも備えるとしますと、その信用力からしましても、人々は、既に国際基軸通貨の地位にあるデジタル米ドルを選択するのではないでしょうか。乃ち、デジタル人民元の最大のライバルはデジタル米ドルとなるのです。この結果、中国は、先行プラットフォーマーとしてのアドバンテージを失い、世界大に人民元圏を拡げようとする野望や潰えるかもしれません。
デジタル米ドルの圧倒的な優位性からすれば、ザッカーバーク氏は、米議会議員に対して自社への支援を訴えるよりも、中国のデジタル人民元に対抗するために、デジタル米ドルの発行を訴えるべきでした。もっとも、中央銀行によるデジタル通貨発行には慎重に考えるべき様々な面がありますので、国際通貨制度全体に関わる問題は、国際的な議論やコンセンサスの形成が必要なように思うのです。
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