10月5日からスウェーデンの首都、ストックホルム郊外で始まったアメリカと北朝鮮との間の核・ミサイル問題をめぐる実務者協議は、極めて奇妙な様相を呈しています。会談後に開かれた両国代表の見解は、全く逆なのですから。同じ時と空間を共有しながら、何故、かくも両者の説明は食い違っているのでしょうか。
実務者会談の席に付いたのは、アメリカ側はビーガン北朝鮮担当特別代表、北朝鮮側は金明吉首席代表の二人です。会談後の記者会見において、当初、ビーガン特別代表は、合意に向けた感触を得たかのような発言をし、北朝鮮との協議が比較的円滑に進んだことを強調しておりました。しかしながら、もう一方の金明吉代表は、同氏の発言を真っ向から否定し、協議は決裂したと説明しています。アメリカ側が北朝鮮側も合意したとする、スウェーデン政府による2週間後の再協議提案の受け入れも否定しており、先行きは、さらに不透明になりました。金代表曰く‘対朝鮮敵視政策を完全かつ不可逆的に撤回する実質的な措置を取るまで協議する意欲はない’というのですから。‘完全かつ不可逆的’というフレーズは、‘検証可能な’という表現は欠けているものの、アメリカが核放棄の方法として北朝鮮に対して要求してきたCVIDの意趣返しであることは確かです。
両国間の相違を生んだ理由として推測されるのは、会談直後、両代表の合意内容を聞き知ってそれに不満を抱いた‘何者か’による介入です。その理由は、北朝鮮の言い分は時間が経過するにつれて過激さがエスカレートしているからです。会談が終了した直後の5日にはアメリカに対して一方的に責任を押し付ける声明を読み上げるに留まっていましたが、上述した‘完全かつ不可逆的’の発言が飛び出すのは翌6日です。さらに、7日に至りますと、帰途の経由地である北京空港において記者団を前に「米国がきちんと準備できないなら、どんなひどい出来事が起きるか分からない」と述べています。この発言は、明白なる対米脅迫です。北朝鮮側は一切の妥協を拒否し、アメリカに対して譲歩するよう迫っているのです。SLBMの実験は、北朝鮮がこの日のために準備した脅迫手段であったのかもしれません。
それでは、北朝鮮の態度を硬化させたのは、‘何者’であったのでしょうか。もちろん、金代表に交渉を任せつつも、平壌において逐次報告を受けていた金正恩委員長が、協議内容、あるいは、金委員長の対米融和的な態度に不満を抱き、即、その破棄を金代表に命じたのかもしれません。会談終了後の5日6時半頃に金代表が‘決裂’を公表したのは、北朝鮮大使館前であり、しかも声明を読み上げる形でしたので(既に誰かが声明文を作成している…)、本国からの指令を受けた可能性も否定はできません。
あるいは、中国経由で帰国の途に就いていますので、習近平主席からの介入があったとも考えられます。折も折、6日には、中朝国交70年を記念して両国の首脳が祝電を交換しています。双方とも両国間の絆を強調しており、中国側から今般の対米融和的な協議の継続に釘を刺されたのかもしれません。北京空港での金代表の‘脅し文句’は、アメリカではなく、習主席に向けた最大限の対中友好のアピールであった可能性もあるのです。
以上の推測の他にも、北朝鮮利権に関連して、何らかの国際組織が米朝協議の決裂を望んだのかもしれず、介入者の姿は判然とはしません。もしくは、単に北朝鮮側が虚偽の発言をしている、あるいは、米朝が結託して茶番を演じている可能性もあり、真相は藪の中のです。しかしながら、少なくとも独裁国家と実務者レベルで交渉しても、事態を混乱させるのみであり、むしろ、独裁国家側に翻弄されて目的を見失い、巧妙に北朝鮮有利に誘導されてしまう可能性の方が高いように思えるのです。
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実務者会談の席に付いたのは、アメリカ側はビーガン北朝鮮担当特別代表、北朝鮮側は金明吉首席代表の二人です。会談後の記者会見において、当初、ビーガン特別代表は、合意に向けた感触を得たかのような発言をし、北朝鮮との協議が比較的円滑に進んだことを強調しておりました。しかしながら、もう一方の金明吉代表は、同氏の発言を真っ向から否定し、協議は決裂したと説明しています。アメリカ側が北朝鮮側も合意したとする、スウェーデン政府による2週間後の再協議提案の受け入れも否定しており、先行きは、さらに不透明になりました。金代表曰く‘対朝鮮敵視政策を完全かつ不可逆的に撤回する実質的な措置を取るまで協議する意欲はない’というのですから。‘完全かつ不可逆的’というフレーズは、‘検証可能な’という表現は欠けているものの、アメリカが核放棄の方法として北朝鮮に対して要求してきたCVIDの意趣返しであることは確かです。
両国間の相違を生んだ理由として推測されるのは、会談直後、両代表の合意内容を聞き知ってそれに不満を抱いた‘何者か’による介入です。その理由は、北朝鮮の言い分は時間が経過するにつれて過激さがエスカレートしているからです。会談が終了した直後の5日にはアメリカに対して一方的に責任を押し付ける声明を読み上げるに留まっていましたが、上述した‘完全かつ不可逆的’の発言が飛び出すのは翌6日です。さらに、7日に至りますと、帰途の経由地である北京空港において記者団を前に「米国がきちんと準備できないなら、どんなひどい出来事が起きるか分からない」と述べています。この発言は、明白なる対米脅迫です。北朝鮮側は一切の妥協を拒否し、アメリカに対して譲歩するよう迫っているのです。SLBMの実験は、北朝鮮がこの日のために準備した脅迫手段であったのかもしれません。
それでは、北朝鮮の態度を硬化させたのは、‘何者’であったのでしょうか。もちろん、金代表に交渉を任せつつも、平壌において逐次報告を受けていた金正恩委員長が、協議内容、あるいは、金委員長の対米融和的な態度に不満を抱き、即、その破棄を金代表に命じたのかもしれません。会談終了後の5日6時半頃に金代表が‘決裂’を公表したのは、北朝鮮大使館前であり、しかも声明を読み上げる形でしたので(既に誰かが声明文を作成している…)、本国からの指令を受けた可能性も否定はできません。
あるいは、中国経由で帰国の途に就いていますので、習近平主席からの介入があったとも考えられます。折も折、6日には、中朝国交70年を記念して両国の首脳が祝電を交換しています。双方とも両国間の絆を強調しており、中国側から今般の対米融和的な協議の継続に釘を刺されたのかもしれません。北京空港での金代表の‘脅し文句’は、アメリカではなく、習主席に向けた最大限の対中友好のアピールであった可能性もあるのです。
以上の推測の他にも、北朝鮮利権に関連して、何らかの国際組織が米朝協議の決裂を望んだのかもしれず、介入者の姿は判然とはしません。もしくは、単に北朝鮮側が虚偽の発言をしている、あるいは、米朝が結託して茶番を演じている可能性もあり、真相は藪の中のです。しかしながら、少なくとも独裁国家と実務者レベルで交渉しても、事態を混乱させるのみであり、むしろ、独裁国家側に翻弄されて目的を見失い、巧妙に北朝鮮有利に誘導されてしまう可能性の方が高いように思えるのです。
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