万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

皇室をサポートする中国の不思議

2019年10月20日 15時05分54秒 | 日本政治
人類史上初の共産主義革命であったロシア革命がロマノフ王朝を倒して達成されたことから、共産主義者は世襲王朝を不倶戴天の敵と見なしていると考えられてきました。理論にあっても、カール・マルクスの著書をひっくり返して探してみても、少なくとも明示的には世襲王朝を認める根拠を見出すことはできません。日本共産党も、皇室を脅かす存在として広く認識されており、近年の皇室容認論への転換も‘戦略的変節’として冷ややかな目で見られています。

 共産主義と世襲王朝は人々が一般的に描くイメージとしては水と油のような関係なのですが、現実は、そうとばかりは言えないようです。カンボジアでは北朝鮮兵がシアヌーク殿下の護衛を任されていたことはよく知られていますが、序列社会である点において、案外、両者は共通しているのかもしれません。民主的選出制度なき共産主義国家での権力闘争は、如何にして‘雛壇’の上位に上るのかをめぐる熾烈な闘いです。階級を否定し、その徹底的な破壊を唱えながらより極端な序列社会に行き着いてしまったのですから、共産主義革命もまた、メビウスの輪の典型例となりましょう。

 共産党と‘王室’との関係は、あるいは、20世紀初頭にあってユーラシア大陸でロシアとグレート・ゲームを繰り広げていたイギリスの一部勢力がロシア革命を支援していた点にその起源を求めることができるのかもしれませんが(もしくは、二頭作戦を画策した国際財閥によるマルクスへの支援?)、‘共産党=王室・皇室の敵’とするステレオタイプの見方は禁物なようにも思えます。この見解を裏付けるかのように、近年、中国共産党政権は、日本国の皇室に対して並々ならぬ好意を示すようになりました。

 特に注目されるのが、懸命に皇室の権威維持に努めようとしている態度です。昨日も、ネット上で、即位の礼において韓国が文在寅大統領ではなく李洛淵首相の派遣を決めた件について、日本の皇室の格下げを意味するものではないと主張する記事を発見しました。王室・皇室の世界とは、上述したように厳しい序列社会故に‘格’が重要なのであり、とりわけ序列に敏感な中国らしい記事とも言えます。そしてそれは同時に、日本国ではなく、何故、中国が皇室の序列を上げようと必死になるのか、という素朴な疑問をも投げかけるのです。共産主義理論に立脚すれば、世襲の皇室制度は否定されるべきなのですから…。

 先立ってアメリカは、当初予定されていたペンス副大統領に替えてイレーン・チャオ(趙)運輸長官の派遣を決定しています。チャオ(趙)運輸長官は、台湾系とされながら父親は中国の上海出身の海運事業者であり、極めて中国色が強いのです。序列はナンバー14との指摘もあり、相当に‘格下’となるのですが、アメリカは、この奇妙な人選に何らかのメッセージを込めているようにも思えます。おそらく、それは、日本国民には知らされていない極秘の情報に基づくものなのでしょうが、皇室、中国(上海…)、海運(因みに現皇室の中心的サポーターである創価学会も運輸関連の国土交通相のポストに執着している…)、女性?…といったキーワードを繋ぎますと、そこに一体に何が見えてくるのでしょうか。

 この謎解きについては推論の域を出ませんのでここでは控えることとしますが、中国による皇室利用、あるいは、皇室による中国利用のリスクについては、十分な警戒を要するように思えます。上述した皇室擁護のみならず、中国は、新天皇の即位を以って日中関係がさらに改善するものと強い期待を寄せています。この期待にはそれなりの根拠があるのでしょうから、中国共産党政権の皇室接近は、一般の日本国民にとりましてはリスクとなりましょう。安倍政権につきましても親中への急転換も指摘されていますが、皇室の政治的リスクについては十分に注意を払うべきではないかと思うのです。

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コメント (4)
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