万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

裁判員制度が憲法違反のもう一つの理由

2008年01月16日 17時25分45秒 | 日本政治
「裁判員制度」は国民を否定する愚策―井上薫(弁護士)(2)(PHP研究所) - goo ニュース

 裁判とは、法律の適用を行う仕事であるゆえ、法律の知識がない者がこの権限を行使することは、確かに憲法違反と言えましょう。そうして、裁判員制度にはもう一つ、憲法違反である重大な理由があるのです。

 それは、憲法第80条そのものです。第80条の条文は以下のとおりです。

「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。・・・」

 この条文に従いますと、裁判官と裁判員とは別物であると解釈しない限り、抽選で選ばれる裁判員制度が合法的に成り立つ余地はありません(もし、別物とする解釈が許されるならば、首相や国会議員といった職でも、別の名称で新たに設置できることになる・・・)。裁判員は、事実認定のみを行う陪審員とは異なり、裁判官と同等に、量刑の決定を含めた法律の適用を行う権限を付与されているのですから、憲法第80条に違反することは明らかなのです。

 司法の民主化を唱えながら、電撃的な採択という非民主的な手法で導入したこと自体が矛盾に満ちているのですが、憲法違反が明白な以上、この制度の実施は見送った方が賢明なのではないかと思うのです。

 

 
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

低賃金容認の移民政策は外国人差別?

2008年01月15日 18時33分36秒 | 日本経済
 経済界が移民政策を支持する理由として、外国人の労働コストの安さが挙げられることがあります。しかしながら、外国人の低賃金を前提とした移民政策は、本当に、妥当なのでしょうか。

 EUが、欧州市場を作り上げるに際し、”人”の移動に関連して、先ず、取り組まれた課題は、外国人労働者に対する労働条件の差別を禁ずることでした。つまり、加盟国間で労働者の移動があった場合、相互に他国出身の労働者に対して差別的な待遇をしてはならないことを決めたのです。こうして少なくともEU加盟国の間では、外国人差別をなくしたのですが、低賃金容認の移民政策となりますと、明確に外国人に対する雇用上の差別が許されることになります。移民政策に対する国民の反対理由の一つが、低賃金で働く外国人に雇用を奪われることにあることも考え合わせますと、外国人の低賃金容認は、望ましい政策とは思えないのです。

 ”外国人の低賃金労働の容認+移民の大量受け入れ”と”内外人の無差別賃金+生産拠点の移転(少子化による労働力不足が発生すれば、失業問題は生じない)”という二つの政策を比べますと、後者の方が政治・社会的摩擦も少なく、外国人差別ともならず、かつ、自国のみならず相手国の経済発展にも寄与するのではないでしょうか。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユダヤとイスラムの呉越同舟

2008年01月14日 18時30分35秒 | 中近東
米メリル、40億ドルの追加資本注入でクウェート投資庁と交渉か(ロイター) - goo ニュース

 政治の世界に目を向けますと、ユダヤとイスラムは、パレスチナをめぐり、激しい対立を続けた歴史を持ちます。今日でも、中東和平はなっていません。その一方で、経済の分野では、両者は最近、頓に接近してきているのです。

 それは、欧米の金融機関が、証券から商品へと投資先を変化させてきたことに起因しています。効率的かつ短期的な収益を求める金融機関が、こぞって原油市場に大量の資金を投入するようになったのです。この結果、オイルマネーによるイスラム金融は、110兆円という空前の資産を記録し(日経朝刊)、サブプライム問題で損失を出した金融機関に対しても、資本提供を行うようになりました。つまり、メリルリンチ社もユダヤ系と言われているようですが、ユダヤ金融が石油価格をつり上げ、イスラム諸国は莫大なオイルマネーを手にし、それが再びユダヤ金融に還流される、という関係が、両者の間で成り立つようになったのです。

 しかしながら、ユダヤとイスラムの呉越同舟の挟間で、製造業を得意とする諸国は、石油価格の値上がりとバブル崩壊による金融不安のリスクを抱えることになりました。果たして、このユダヤとイスラムの共生関係は、長期的に維持されるのでしょうか。もし、この仕組みが固定化されるならば、石油高と資金不足に苦しめられる製造業は、技術開発力を頼りに、サバイバル作戦を展開しなくてはならないのです。 

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第三次国共合作の亡霊が蘇る日

2008年01月13日 18時43分19秒 | アジア
台湾立法院選、野党国民党が圧勝 与党、総統選に打撃(朝日新聞) - goo ニュース

 台湾独立国連盟ウェブサイトの記事によりますと、1962年に、大陸の中共政府と台湾の国民党政府は、密かに第三次国共合作を結び、後は公表を待つばかりの段階にあったと言います。真偽のほどはわかりませんが、同年8月12日に、ロンドン・オブザーバーの記者、ブラッドウォース(Dennis Bloodworth)氏は、以下の条件で国共合作が合意されたことを伝えたそうです。

1.蒋介石の存命中は国共双方とも攻撃をさしひかえる。

2.蒋介石の死後、台湾は国府の統冶下におかれるが、チベットと同様な中共政府下の自治区になる。

3.約10年ないし20年後に独立国となるかあるいは中国本土に帰属するかを決める住民投票を実施する。

4.国府が占有している金門・馬祖などの沿岸諸島を攻撃せず、金門島とこれに面する中国本土の厦門を一つの緩衡行政地区とし、本土と台湾との通行の自由を保証する。

 果たして、この国共の密約は本当に存在したのでしょうか。そうして、国民党が、議会選挙に続いて総統選挙にも勝利をおさめた場合には、国共合作の合意は、蘇るのでしょうか。1962年当時の合意でも、条件の3に住民投票の実施が明記されているとはいえ、一たび共産化しますと、台湾の人々が、自由に政治的な選択の意志を表明できるとも思えません。今回の選挙結果の報に接し、自由化と民主化を進めてきた台湾の行方を心配せざるを得ないのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

”ばらまき公約”は選挙に勝つ秘訣?

2008年01月12日 19時52分13秒 | アメリカ
クリントン候補 12兆円景気刺激策 財源確保に触れず(産経新聞) - goo ニュース

 何れの国でも、立候補者は、集票戦略として”ばらまき公約”を選挙で掲げるものです。はっきり見えない政策ではなく、目に見える形で利益供与が示されるわけですから、有権者は、ついつい損得勘定から”ばらまき政策”に引きつけられてしまうのです。

 しかしながら、こうした政策が、長期的に見て、国民の利益に叶っているかどうかは、疑問なところです。朝三暮四と揶揄されますように、その負担は、やがて国民に重くのしかかってくるからです。政治家さんは、自らの懐が痛むわけではありませんので、いくらでも大風呂敷を広げることができます。しかも、国民の負担である増税は、選挙で当選した後で実施すればよいのですから。

 選挙に際して”ばらまき公約”が掲げられる場合、国民は、慎重に短期的な利得と長期的負担を吟味する必要がありましょう。そうして、それは、財政の悪化が国にもたらすマイナス面について考える機会ともなるのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

排出権原理主義の恐怖

2008年01月11日 20時18分23秒 | 国際政治
地球環境問題で我々ができることとは? 二酸化炭素は本当に地球温暖化の原因なのか?(ニュース畑) - goo ニュース

 排出権取引は、温暖化ガス削減のための唯一の効果的な方法なのでしょうか?排出権取引の有効性については、既に、排出源の移転に過ぎないとか、排出権取引を狙った利権がらみ、という指摘もあります。

 そもそも、ある目的を達成しようとする場合、方法や政策が複数あることは当然のことです。温暖化ガスには、二酸化炭素のみならず、格段に温暖化効果の高いメタンやフロンなどもあり、また、発生過程も産業や製造工程によって異なっています。さらには、排出規制の他にも、植林や森林の保護など、温暖化ガスの吸収促進策もあります。ですから、対象や原因に合わせて、複数の方法を同時に追求する方が効果的である政策領域でもあるのです。

 現実に、有効な方法や政策が他にあるならば、敢えて、欠陥の多い排出権取引にこだわり、無理無理に排出権取引を介在させる理由はないのではないか、と思うのです。”始めに排出権取引ありき”、という姿勢は、原理主義的ですらあります。排出権取引の欠点を考えますと、むしろ、地球温暖化対策には、選択肢の広い、より柔軟な制度を構築した方がよいのではないでしょうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の市場開放の限界

2008年01月10日 18時32分41秒 | アジア
地球儀に台湾島と表記 学研「中国の指示」、販売中止(共同通信) - goo ニュース

 年末に、当の音声ガイド付き地球儀を購入しようかと迷いましたので、事の顛末に少しばかり驚くのですが、この事件からは、中国の市場開放の限界を見てとることができます。

 近年の急激な経済成長の陰に隠れて、しばしば中国が共産主義国家である事実を忘れがちです。しかしながら、中国では、まだまだ政治的な言論統制が続いているのです。このため、たとえ外国企業の製品であろうとも、わずかなりとも政府の公式見解や政策方針に反する表現があれば、中国政府は、公然と圧力をかけてくるのです。中国市場にあっては、経済活動の自由の幅は、他の自由主義諸国と比較して狭いと言えましょう。一党独裁にあっては、多様な意見は許されないのです。

 このことは、中国市場に進出する企業にとりましてはリスクとなりますし、中国市場の限界でもあります。今後、中国は、自国の経済成長を維持するために、外国企業に妥協するのでしょうか、それとも、政治的立場を優先して、市場に対する政府介入を継続してゆくのでしょうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原油価格下落で一件落着になれない悲劇

2008年01月09日 18時25分49秒 | 国際経済
ニュースを斬る 2008年を斬る:原油価格130ドルのシナリオ 巨額マネーの流入で引き続きボラティリティーは高い(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース

 証券市場から商品市場への巨額のマネーの流入は、原油をはじめ、穀物や稀少資源の価格を大幅に押し上げています。この一連の価格上昇は、需給バランスに即した適正価格に落ち着くことで一件落着するようにも思われるのですが、そう期待どうりにはいかない可能性もあるのです。

 それは、あまりに多くの金融機関が商品市場への投機に走ったために、商品価格の値下がりが、巨額の損失を生む可能性があるからです。金融機関の損失が、即、金融不安をもたらすことはよく知られるところです。サブプライム問題での損失に加えて、多数の金融機関が商品市場でも損失を計上することになるのですから、世界経済は、大混乱をきたすかもしれません。原油価格などの値下がりで、企業のパフォーマンスが好転しても、金融部門がカオスに陥っては、元も子もありません。このことは、製造業を生かすのか、金融業を生かすのか、という究極の選択を迫られることになる可能性さえあるのです。

 望ましくない結末が予測されるのですから、金融機関は、やがて自らの首を自らで絞めるような行為は控える方が賢明なのではないか、と思うのです。本当の悲劇は、すぐ目の前にまで忍び寄っているかもしれないのですから。
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北朝鮮への支援金は二度払い?

2008年01月08日 20時08分37秒 | アジア
北朝鮮支援基金「日本が100億ドル」 韓国が皮算用(朝日新聞) - goo ニュース

 1965年6月に日韓基本条約が調印された時、日本国は、韓国を朝鮮半島における唯一の合法的政府と見なしました(国連決議195(Ⅲ)号に基づく・・・)。このとき同時に、日韓請求権協定も締結され、日本国は、韓国に対して1080億円の無償供与と720億円の借款を行なったのです。ここで、一つの疑問が生じてきます。拉致や核問題の解決なくしてあり得ないのですが、もし、仮に日朝が国交を結んだ場合、日韓併合を理由に経済支援を行うとすると、二重払いになるのではないか、ということです。

 60年代当時にありましては、”国連軍”の名の下で、朝鮮戦争が戦われたわけですから、北朝鮮は非合法的な政府であり、韓国のみが、日韓併合時代の財産・請求権の交渉相手でもありました。この時、双方とも戦前の朝鮮半島全域を対象としてこの問題の解決にあたったと考えられます(もし、違っていましたら、どなたか教えてください!)。このことを考慮しますと、北朝鮮が、日韓併合時代に関連して、何らかの請求を行うとしましたら、その請求先は、韓国ではないか、と思われるのです。また反対に、日韓交渉の対象が、現在の韓国のみに限定されている、ということでしたならば、日本国は、未だに北朝鮮に対して戦前にかの地に残してきた資産についての請求権を保有していることになります。

 韓国が、勝手に日本国の100億ドルにものぼる経済支援の額を決めるとは、言語道断なことなのですが、何れにしましても、日本国が、どれ程に北朝鮮に対して経済支援を行うべき根拠があるのか、韓国との関係も含めて再検討してみる必要性はありそうです。


 

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

株価下落は自社株買いのチャンス?

2008年01月07日 20時30分42秒 | 日本経済
日経平均続落で1万4500円…下げ幅4日で1150円超(読売新聞) - goo ニュース

 年が明けて以来、日本国の株式市場は、相場の下落を続けているようです。しかしながら、その一方で、ピンチはチャンスとも言います。これを好機として、企業は、自社株買いを進めてはどうか、と思うのです。

 株式市場の下落の原因は、サブプライム・ローン問題の発生により、海外投資家が損失の穴埋めのために日本株を売却しているとする見方があります。海外投資家の売りにより、この下落が起きているとすれば、これは、むしろ、自社株買いのチャンスかもしれません。通常、自社株の下落は企業価値を下げますが、自社株買いを行えば、発効済みの株式が償却されてるわけですから、残りの株価を押し上げる効果があると言います。また、市中で売買される株式数が減りますので、株式市場の混乱に影響を受けにくい体質をつくることもできます。

 もちろん、資金的な余裕がなくてはならないのでしょうが、この機会を体質強化のために生かすことができれば、株価下落という危機を乗り越えることができるのではないか、と思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ムシャラフ大統領の責任とは

2008年01月06日 17時44分30秒 | アジア
暗殺はブット氏の不注意 ムシャラフ大統領、米テレビで(共同通信) - goo ニュース

 国家の基本的な役割の一つは、言わずもがな、人々の生命、身体、財産を守ること、すなわち治安の維持です。ホッブスに始まる個人主義的な政治思想にあっては、この役割は、国家の存在理由そのものとさえ見なされてきました。ムシャラフ大統領が、暗殺は暗殺された側の不注意に原因があると考えているとしますと、この発言は、かなり無責任な響きを持つことになりましょう。

 もちろん、テロが横行する状態を考慮すれば、暗殺の危険性に備えるに越したことはありません。しかしながら、その反面、国民に直接指示を訴えるというパキスタンの政治スタイルから見ますと、暗殺を怖れては、政治活動は何もできないことになってしまいます。ですから、おそらく、ブット元首相は、暗殺される可能性を自覚しながらも、民主化のための活動を続けることを選択したのでしょう。つまり、遺書に残されているように、ブット元首相は、自らの命を賭してパキスタンに帰国したことになります。

 ムシャラフ大統領は、軍部をバックに政権を維持しているのですから、本来ならば、テロリストに対して強硬な対策が採れたはずです。それにもかかわらず、自らの責任を転嫁するとは、軍人としても、潔くありません。少なくとも、犯人の逮捕に全力を尽くし、暗殺事件が再発しないような国造りに努めることこそ、為政者の責任ではないか、と思うのです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

投機経済よ、さようなら

2008年01月05日 19時46分39秒 | 国際経済
ニュースを斬る 2008年を斬る:「不安の1年」と対峙せよ 世界的パラダイム転換の現実から逃げるな!(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース

 中央銀行の基本的な役割とは、通貨価値の安定、すなわち、物価の安定を実現することです。インフレやデフレに対しては、政策金利や公開オペなどの金融政策を駆使して対処することができるのですが、商品市場における投機を原因とした価格の高騰には、打つ手がないのです。

 このことは、不動産という一部の分野における急激な価格上昇が破滅的な経済危機をもたらした日本国のバブル崩壊の失敗に類似した現象が、世界規模で起きる可能性を示唆しています。しかも、高騰している商品が、物価の大もとともなる原油や穀物ということになりますと、その影響力は、計り知れないものとなりましょう。この二つの基本的な商品の高騰と欠乏は、古今東西を問わず、政治の不安定化をも招いてきましたのです。

 もし、パラダイム・シフトというものを予測するとするならば、それは、市場経済において”投機”に対してどのような対応を行うのか、ということで大きく方向性が分かれると思うのです。市場経済は、ギャンブル性の高い”投機”とは、そろそろ”さようなら”を告げる時なのかもしれません。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

商品市場に相場安定化システムを

2008年01月04日 20時30分16秒 | 国際経済
原油が一時1バレル100.09ドル、史上最高値を更新(ロイター) - goo ニュース

 市場経済とは、原則的には政府介入を嫌うものです。しかしながら、市場秩序を大きく乱すような行為に対しては、中央銀行の金融政策や競争当局による競争政策と同様に、ある程度の政府介入が許されるのではないか、と思うのです。

 特に、最近の原油価格や穀物価格の投機による値上がりは、全般的な物価高を招き、人々の生活を脅かすに至っております。投機行為は、市場のメカニズムから見ますと何ら経済に益しないのですが、これまでのところ、何らの手は打たれていません。証券市場でさえ、度重なるバブルや恐慌の経験から、株価の乱高下を押さえるためのシステムを導入されているのですから、ましてやより影響の広範な商品市場にこそ、価格を安定化させるための抑制システムを設けるべきではないか、と思うのです。例えば、実勢相場との乖離指標を定めて、ある一定の限度を超えて価格が上昇した場合には、取引中止とする、など、幾つかの方法があるはずです。

 このまま手をこまねいて見ていますと、市場経済自体が崩壊してしまうかもしれません。少なくとも、経済活動と人類の生存に不可欠となる原油と穀物市場には、抑制システムは必要なのではないでしょうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

研究開発は努力のたまもの

2008年01月03日 20時00分12秒 | 日本経済
科学技術力強化へ新法を検討 自民、中国などの戦略に対抗(共同通信) - goo ニュース

 日本国の科学技術力の低下が危ぶまれる一方で、日本人の好きな言葉ランキングにおいて”努力”が大幅に順位を下げたと言います。科学技術の研究・開発には、インスピレーションとともに、実験の繰り返しや緻密で正確なデータの収集など、地道で地味な努力も不可欠です。努力を忌避する傾向は、日本国に将来の衰退を知らせるサインとも言えましょう。

 戦後の急激な高度成長を経て、日本国は経済大国へと飛躍的に成長し、国民の生活水準も豊かさを実感するまでに上昇しました。しかしながら、栄枯盛衰の歴史は、古今東西を問わず、繰り返すものです。豊かさの上に胡坐をかいて、努力を忘れてしまいますと、日本国もまた、この理に従うことになりましょう。幸いにして、人間は、現在の傾向が長期的に続きますと、どのような結果が待ち受けているのかを予測能力を持っています。衰退の兆候を察知した以上、やはり、そうならぬための対策を講じることこそ、肝要と言えましょう。

 ”努力”の復活こそ、日本の将来を、再び発展に向けて開くのかもしれません。

 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企業も消費者も主役の経済へ

2008年01月02日 18時27分23秒 | 日本経済
生活者・消費者重視に転換=福田首相が年頭所感 (時事通信) - goo ニュース

 左右両極のイデオロギーによる対立構図が定着していた頃、企業は、消費者や生活者のあたかも敵の如くに描かれていたものです。福田首相の年頭所感にあります”生活者・消費者重視に転換”は、この構図の引き継ぐものであるのかは定かではありませんが、市場経済システムの望ましい姿とは、市場に参加する全ての人々の利益が調和する形ではないか、と思うのです。

 市場経済とは、一人勝ちできないシステムです(本ブログの8月1日の記事http://blog.goo.ne.jp/kuranishimasako/e/65b55db927f28d99f0a8199b4091b47cを、よろしければ、ご参照ください)。経営者、労働者、株主、そうして、消費者のそれぞれが、自分たちだけで利益を独占しようとしますと、市場経済のメカニズムはスムースに働かなくなります(長期的には、自己の利益も失う・・・)。この側面を考えますと、市場経済を円滑に機能するには、特定の集団の利益を優先させるよりも、全ての参加者が”主役”となるような仕組みを考える方が適切であるとも思うのです。もし、消費者・生活者のみに主役の座を与え、企業活動に政府が不用意に介入することになりますと、むしろ、経済全体の停滞を招き、国民の生活水準も下がってしまう可能性もあります。

 来るべき時代の経済とは、企業の活動が国民の生活水準の向上に資し、株主のみならず労働者もまた適切な利益の配分を受け、しかも、メカニズムの中に健康や環境を改善する方向性をビルトインしているような市場システムなのではないか、と、年の始めに考えてみるのでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする