Ben Websteer / My Man ~ Live At Montmartre 1973 ( デンマーク Steeplechase SCS-1008 )
ベン・ウェブスターは1973年9月にアムステルダムで亡くなっているが、これはその半年前に行われたライヴ演奏の様子で、ラスト・レコーディングのようだ。
スティープルチェイスには歴史的に見て重要な録音がたくさん残されているが、これもその1つと言っていいかもしれない。
渡欧後は気が向いたら場所を選ばずに古いスタンダードなどを悠々と吹くという、穏やかで静かな生活を送っていたようだ。 心身共に傷ついて流れていった
というわけではないので、途切れることなく活動は続いていて、レコードもかなりの数が残っている。 一般的にはヴァーヴの作品を何枚か聴いて終わり、
という感じだろうが、それ以降の作品もヴァーヴ期と同じ傾向の内容なので、出逢いがあれば聴いてみるようにしている。
このモンマルトルでの演奏はさすがに衰えは隠せないけれど、そもそも隠そうともしていない、ありのままの姿を聴くことができる。 アップテンポの曲では
しっかりとリズミカルに、バラードでは深いサブトーンを効かせて、しっとりとした演奏をしている。 その姿には立ち枯れたという感じはない。
どちらかと言えば、バックの現地ピアノ・トリオの演奏の方が少し木目が粗いかな、と感じるくらいだ。
ベン・ウェブスターはこれでいい。 これ以上のことは何も求めない。 変なことをやられたら、逆にシラケてしまう。 本人もそのことは十分わかっていた
のだろうと思う。 60年代後半以降のモンマルトルにはパウエルやデックスも出ていたのだから、まあ凄いことである。 演奏できる場があり、演奏を聴きたいと
願う人がいて、それを記録する手段もあったわけだ。 後世の我々はありがたく聴けばそれでいいのだと思う。