Sonny Stitt / Plays Arrangements From The Pen Of Quincy Jones ( Royal Roost RLP 2204 )
かねてからソニー・スティットのレコードで何か1枚だけ手許に残しておこうと思ってぼちぼち聴いているのですが、どれも今一つピンとこない。
この人の一番いいレコードはどれなんだろう? という問いが解決しない状態が長年ずっと続いています。
40年代のビ・バップ期から亡くなる80年代初頭まで現役を貫き通し、日本を愛してくれて、100枚以上の作品を残したと言われる偉大なミュージシャンですが、
ことレコード芸術ということになると、どうもこの人は分が悪い。
パーカーに似ていると言われるのを嫌い、一時はテナーだけを吹いていたというけれど、レコードで聴く限りにおいてはパーカーを思い出すことはない。
音の張りは少し似ているけどフレーズにスピード感はなく、節回しはどちらかと言えばソニー・クリスなんかのほうに近い感じだと思います。
技術的にはものすごく上手くてハードバップの世界では吹けない演奏なんかなかっただろうし、テナーだけではなくバリトンも吹いていたから、演奏家
としては無敵の存在だったはずですが、アルトの音の質感が全体的に均一で陰影に乏しくて、このせいでどうしても単調な印象になってしまう。
演奏した音楽もブルースやスタンダードなどのハードバップスタイル・オンリーで難しいことも凝ったこともやらなかったから、結局どれを聴いてもみんな
同じで、たいして変わらないじゃないかという風になってしまう。 何にでも対応できるから、共演者にも無頓着でこだわりを見せなかった。
そんな状況を見かねたのか、ルーストが用意してくれた豪華な企画のこのレコードも本来ならこの人の代表作になってもおかしくなかったはずなのに、
やはり何かが欠けているという感じが拭えないのはなぜだろう。 バックのビッグバンドの演奏もあまりに器用に纏まり過ぎていて、スリルに欠ける。
万全の状態ではない中で作られたパーカーのストリングスものやビッグバンドものの足もとにも及ばない。
こうしてソニー・スティットの「最後の1枚」探しの旅はまだまだ続く。 終わりはなかなか見えない。