廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

最初のピーク期に隣接した名唱

2019年10月12日 | Jazz LP (EmArcy / Mercury)

Sarah Vaughan / The Divine Sarah Sings  ( 米 Mercury MG 25213 )


サラ・ヴォーンの歌手としての最初のピークは1948~53年のコロンビア期だが、54年からマーキュリーに移籍した後も有名なブラウニーとの録音も含めて
たくさんのレコードを作っている。 その中でもコロンビア期に隣接する時期に録音されたこのアルバムは特に出色の出来になっている。

サラにしかできない帯域の広さを活かした声量を屈指して歌われる曲はどれも素晴らしい。 こんなに歌がしなやかに形を変えながら羽根のように軽く
漂っていくのは彼女にしかできない芸当だ。 聴いているうちにそれが人によって歌われているということすら忘れてしまう。

たくさんレコードがあるのはいいことだが、そのすべてが傑作と言ってしまうのは手抜き工事だ。 彼女の歌はどれも満点だが、その歌の素晴らしさと
互角に張り合えるバックの演奏がなければ、アルバムとしての聴き応えは無い。 ヴォーカルのアルバムはそこが難しいと思う。 その点、このアルバム
は彼女の歌を邪魔せず上手くサポートできていて、その歌唱の素晴らしさが浮き彫りになっている。 コロンビア期に確立した柔らかく伸びやかな唱法が
まだ色濃く残っている時期の良さを上手くパッケージできている。

ルックスの印象が人気や評価を左右する女性ヴォーカルの世界で彼女の人気は低いままである。 でも、私はそれくらいでちょうどいいと思っている。
そのおかげで彼女のレコードは安く、いつでも好きなだけ買って聴くことができるのだ。 私にとって、サラ・ヴォーンは女性ヴォーカルの世界では
不動の絶対的エース。 その位置付けは30年以上変わることはない。


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