報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「こだま705号の旅」

2024-11-29 20:54:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日07時15分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅→東海道新幹線705A列車・1号車内]

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく、16番線に、7時27分発、“こだま”705号、名古屋行きが、入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に停車致します。グリーン車は、8号車、9号車、10号車。自由席は、1号車から、6号車までと、15号車、16号車です。……〕

 

 コンコースの売店は混雑していたので、ホームの売店で駅弁を購入した。
 もちろんリサが購入したのは、肉系。
 『炭火焼牛カルビ重』だった。
 私は魚系で、『深川めし』にした。
 パールは小食で、『おにぎり弁当』である。

〔「16番線、お下がりください。7時27分、当駅始発、“こだま”705号、名古屋行きが入ります。安全柵から離れてお待ちください。……」〕

 駅弁とお茶などを買った後、ホームに戻る。
 すると、列車がホームに滑り込んで来たところだった。

 愛原「N700Aか……。さすがに、“こだま”じゃ、N700Sには当たらないかな……」

 駅弁を手に、先頭の1号車に向かう。
 そうしている間に、可動式の安全柵が“乙女の祈り”のメロディを鳴らしながら開いた。
 平日ということもあり、ビジネス客の方が多かったが、外国人旅行客の姿も多く見かける。
 それでも、まだ“こだま”は空いている方だった。
 隣の“のぞみ”が発車する17番線の方が、乗客が列を作っている。

 愛原「おー、修学旅行だ」
 リサ「おー!」

 発車票を見ると、“こだま”705号の後、16番線には『修学旅行』と表示されていた。
 16両編成をまるっと修学旅行生が貸し切るわけだが、多くが1つの学校で16両編成をまるっと借りるわけではなく、いくつかの学校が何両かに分けて乗ることが多い。
 今や修学旅行も、行先多彩の時代で、全員で関西方面に……という時代ではないのだ。
 リサ達のように沖縄に行ったり、海外に行ったりすることも多い。
 先ほどの修学旅行生達はここにはいないので、別のホームに行ったのだろう。
 人数的に2~3両ほどの貸切で事足りそうだったので、一般の列車で数両貸切にしたのかもしれない。

 愛原「リサは修学旅行で新幹線に乗る機会は無かったな」
 リサ「中等部代替修学旅行では乗ったけどね」
 愛原「あ、そうか!帰りか!」
 リサ「そう。郡山から」
 愛原「修学旅行専用列車じゃなかったが、“なすの”の車両を何両か貸切にしたんだったな」
 リサ「そう」

 そんなことを話しながら、先頭の1号車に向かう。
 パールは途中の喫煙所に立ち寄り、吸い溜めしてから乗るという。
 “こだま”は空いていて、この時点で1号車は数えるほどしか乗っていなかった。
 富士山観光には“こだま”と“ひかり”が需要がありそうな気がするが、さすがに端っこの車両は空いているようだ。
 1号車に乗り込み、空いている3人席に座る。
 リサには窓側に座らせ、私は真ん中の席に座った。
 荷物は網棚に載せる。
 機内持ち込み可能サイズの荷物ということもあり、こちらの棚にも載せることはできた。

 

〔ご案内致します。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に、停車致します〕
〔「皆様、おはようございます。本日も新幹線をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は7時27分発、“こだま”705号、名古屋行きです。品川、新横浜、小田原、熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松、豊橋、三河安城、終点名古屋の順に停まります。……」〕

 座席に座ると、リサは早速テーブルを出して、駅弁を食べ始めた。
 私も駅弁の蓋を開ける。

 リサ「先生は魚系好きだね」
 愛原「まあ、こういう時にしか食べれないからな」

 隣の15番線に、列車が来たが、そこに多くの学生が乗り込んでいる。
 どうやら、他にも修学旅行生が乗るようだ。
 私服のリサと違って、制服を着ていた。
 まあ、当たり前か。
 そのリサだが、黒いプリーツスカートを穿いて、上は白いTシャツというラフな姿だ。
 半袖のグレーのパーカーを羽織って、いざという時はそのフードで角が隠せるようにするという。
 今のところは、完全に人間に化けている状態。
 化け切れないのは、牙と少し長くて尖った爪と、毛先がオレンジ色に染まっているおかっぱ頭くらいか。

〔「……発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ「修学旅行生は、こっちに乗って来ないね?」
 愛原「そりゃそうだろう。大体が皆、関西方面に行く。多くは“のぞみ”や“ひかり”で行くものだよ。あともしくは、修学旅行用列車か」
 リサ「先生の時は?」
 愛原「俺の時は往復“ひかり”だったな。行きは100系で帰りは300系だった。今はもう廃車だから、懐かしいよ」

 ましてやこの電車は名古屋止まりだから、尚更乗ってこないだろう。

[同日07時27分 天候:晴 JR東海道新幹線705A列車・1号車内]

〔「レピーター点灯です」〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが鳴り響く。
 かつて、初代“のぞみ”300系の車内チャイムで使用されたものだ。
 これを今は、東京駅の発車メロディに使われている。
 その頃には、パールも座席に戻っていた。

〔16番線、“こだま”705号、名古屋行きが、発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側まで、お下がりください〕
〔「ITVよーし!乗降……終了!16番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ホームにけたたましい客扱い終了合図のブザーが鳴り響く。
 かつてはベルだったのだろうが、今はブザー。
 JR東日本側が甲高い音色なのに対して、東海側は重厚なブザー。
 紛らわしくないようにする為だろうか。
 そして、ドアチャイムの音と共にドアが閉まった。
 “乙女の祈り”のチャイムと共に、安全柵も閉まる。
 それから、列車が走り出した。
 私はスマホを取り出し、善場係長に東京駅を出発した旨の報告をメールで行った。

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”イントロ)♪♪。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 メールはすぐに返信が来て、『どうかお気をつけて』というものだった。
 予定通りの新幹線に乗れたので、この時点では、善場係長も何も言う事は無いということだ。

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