報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「学生時代の思い出」

2016-06-22 17:58:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
 私の名前は私立探偵、愛原学。
 東京都内で小さな探偵事務所を営んでいる。
 今日のところは依頼が無い為、私は住居部分の居室の整理をしていた。
 と、そこへ1枚の写真がヒラヒラと落ちて来た。
「?」
 私は何だろうと思って拾い上げてみると、それは若かりし頃の私の写真。
 若いも若い、高校生時代に撮ったものだ。
 何でそんなものがここにあるのか不明だが、恐らく実家から持ってきた物の中に紛れ込んでいたのだろう。
(学生時代か……)
 こんな私でも、甘酸っぱい思い出はあるものだ。


 高校時代の私は当時、好きな同級生がおり、何とか振り向いてもらおうと努力していた。
 いや、今から思えば本当に恥ずかしい。
 そしてどうにか、声を掛けることには成功したものの……。
「愛原君と一緒に帰るの?……でも、誰かに見られたりしたら恥ずかしいし……」
「えっ、そんな……!どこが恥ずかしいってのさ!?」
(↑ブレザーの上からアイドルヲタが着ている法被を着用し、しかもそこには『沙織命』と書かれている。沙織とはこの愛原が今誘っている女子高生の名前。ご丁寧に『沙❤織』という鉢巻きまで巻いている。しかも、後ろにはリアカーを改造した人力車を引いており、屋根やら電飾やら提灯やらを飾りつけている。更にその提灯には『沙織専用』とか『沙織以外乗車禁止』と書かれている)
「さよならっ!」
「あっ、待ってよ!」
(↑沙織、当然ながら脱兎の如く逃げてしまう)
「ったくもう!女ってのは全然わかんねーや!」
「俺はお前がよく分からん……」
 そこへ現れたのは、同じクラスの男子で吉田。
 中学の時からの付き合いである。
「よー、吉田ァ。一緒に帰ろうぜー」
(リアカー改造人力車をギシギシ引きながら寄って来る)
「恥ずかしいからヤダねっ!」
(同じくドン退きする吉田)
「えー?」
 吉田は腕組みをしながら呆れて私に言った。
「全く。お前って奴ぁ、女ってもんが全然分かっちゃいねぇ」
「そうか……」
 ガックリ来る私。
「やっぱり餌付けの仕方が悪かったか……」
「人間ってもんも全然分かってねーな、おい!?」
「だって、こんなに工夫してるんだぜ?それなのによォ……」
「いや、だからさ!お前は『押す』ことにばっかり気を取られてるんだって!『押す』だけじゃなくて、たまには『引いて』みなきゃ!」
「そ、そうか。それなら……」
 ちょうどすぐ近くに野良猫がいた。
 リアカー改造の人力車でもって突撃。
「ギニャァァァッ!」
 リアカーに轢かれる猫。
「『ひいて』みたぜ?こっからどうすんだ?」
「『轢く』んじゃねぇ!『引く』んだ!ってか、オマエ、ワザとやってんな!?あ!?そうだろ!?」
「えっ?えっ?えっ?」
「……ってか、待てよ。愛原のお目当ては、今のコだけだよな?」
「もちろん!」
「しかも、俺よりずっと長い顔見知りじゃなかったか!?」
「近所に住んでるもんで、幼稚園から知ってる」
「おぉぉぉい!それを早く言えっ!それを使わねぇ手はねぇじゃん!?」
「そ、そう?でも、どうすりゃいいんだ?」
「そこはラブレターでいいだろう!」
 当時、まだケータイすらそんなに普及していなかった。
 ガラケーどころか、PHS(ピッチ)を持っているだけで自慢できた時代だ。
「思い出話の1つでも書いて、懐かしい気持ちにさせるんだよ。それから……」
「わ、分かった!ちょっと書いてみる!」
 私は早速、下書き用に鞄の中からノートを取り出し、白紙を1枚破った。
「えーと……。じゃあ、『オレはお前の恥ずかしいネタを知っている。例えば小1の時、トイレが間に合わず、校舎裏でお漏らしした件だ。ちゃんと証拠も押さえている。それらをバラされたくなければ……』」
「そうそう。『オレと付き合え』って書けばもうシメたもん……って、コラァッ!!」

「……先生、先生!」
「フフ……。その後、中1の時、生理用ナプキンを忘れて……」
「先生、何がですか!?」
「……って、おおっ!?」
 過去の思い出に浸っていたら、強制的に現実に戻されてしまった。
 私を過去の思い出から引き戻したのは、助手の高橋正義。
 まだ20代半ばだが、私の所に押し掛け助手となった。
 その経緯はまた後程。
「先生、ボスから電話ですよ?」
「ボスから?ちょっと待て!」
 私は急いで事務所に戻った。
 そこで保留になっている電話の受話器を取った。
「も、もしもし!?お待たせしました!」
「私だ」
 電話の向こうからバリトンボイスが聞こえて来る。
「ボス!」
「仕事の依頼だ。また地方の仕事になるが、良いか?」
「はい、もちろんです!どこへでも行きます!」
「今度はキミの望む通り、“名探偵コナン”や“金田一少年の事件簿”のような仕事になりそうだ」
「本当ですか!?」
「場所は◯×県霧生市。そこの郊外にクライアントは住んでいる。報酬はキミの言い値で良いという大盤振る舞いだ」
「おおっ!」
「その代わり、危険が伴う仕事となろう。心して掛かるように」
「分かりました!すぐに向かいます!」
「明日には到着してくれ。では」
 ボスからの電話が切れた。
「高橋君!明日、出発するぞ!仕事の依頼だ!」
「はい!」

 高橋君は私がとある事件を解決した際、容疑者候補にいた若者だ。
 年齢は20代半ばで、その事件が起きた時、彼はニートであったが、私の事件解決ぶりに感動し、私の所で働きたいとこの事務所にやってきた。
 彼がどうしてニートをしていたのかが分からないが、元ニートであった割には事務の仕事をそつなくこなした。
 その為、今では私の助手として働いてもらっている。

 こうして私達は現場に向かったわけだが、まさかあんなことになるとは……。
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本日の雑感 0622

2016-06-22 09:59:47 | 日記
 とある熱心な信徒さんのブログを見たのだが、未だに御登山に際して創価学会からの嫌がらせってあるのか?
 寺院前にバスを待たせていたら、学会員から騒音苦情の電話を入れられただとか、寺院関係者の名を騙ってバスのキャンセルを入れられただとかだ。
 そのうち、ラーメンやピザ50人前くらい注文されて送られてきそうな話だが、もしそうだとしたら、確かに学会もセコイことするものだ。

 不思議と路線バスの方は、何も嫌がらせを受けていない。
 これは恐らく富士急行自体が学会の息が掛かっている為、末端の学会員が勝手なことをできないのだろう。
 今でもそうなのか分からないが、富士急行の社長は学会員だという話だ。
 だいぶ前に聞いた話なので、社長が代替わりしていたら違う可能性はあるし、とにかく、今でもそうなのか分からない。
 今後の調査が待たれるところである。
 ただ、学会系のバス会社で今は倒産した大富士観光バスの運転手達も、倒産後は富士急系バス会社に転職した者は多数いたらしい。
 尚、私が言った『路線バス』というのは富士急行傘下の富士急静岡バスのことであり、この辺はどの程度学会の息が掛かっているのか分からない。
 私が見る限り、それほどではないと思う。
 JRバス関東が撤退した背景については不明だが、現段階ではあれ以上のバス増便は無いものと思われる。
 因みに私が顕正会時代に、当時世話になっていた班長(顕正新聞にも出てきたあの人)に、東京駅から大石寺まで直通の高速バスがあるという話をしたら、
「そんな物見遊山な!やはり宗門は堕落している!」
 と、憤慨していた。
 当時は頷いていたが、今から思えば、随分とイミフな反応をした上長だ。
 もっとも、身延山久遠寺に直通するバスもあるという話をした上での話なので、同等に見ただけかもしれない。
 東京都心から大石寺までバスを貸し切る場合、運賃はこの“やきそばエクスプレス”の運賃を基準しているので、貸切バスが安いかどうかは高速バスの運賃を参考にしてみると良いだろう。
 というか、多くの貸切バスが、似た経路を走行する路線バスの運賃を参考にしている。
 私が1度だけ乗った支部登山の地区登山バスは、別に学会からの嫌がらせは無かったが、宗門側も色々と対策を取る必要があるということだ。
 登山担当者は大変だ。

 閑話休題。
 “私立探偵 愛原学”の長編について。
 タイトル:“私立探偵のバイオハザード”(仮題)、“Bio Hazard in Japan”(仮題)、“私立探偵 愛原学”のままで行く?
 舞台:日本国内のとある地方都市(都道府県は明示しない)。架空の都市名は付ける?愛原がクライアントの依頼でその町に来たという設定は確定。
 登場人物:愛原学だけではあれなので、助手を登場させ、更には町の惨禍で出くわした協力者も加えて三人称で進める。
 ステージ:愛原がまずゾンビ集団と出くわす所(宿泊先のホテル?夕食中のレストラン?とにかく、ゾンビの集団からまずは逃げ出すことがクリアの条件)、地方鉄道の駅周辺や駅構内(JRではない。2両編成の電車が走る中小私鉄の駅。ゾンビの包囲網から電車で脱出することがクリアの条件)、大寺院(日蓮正宗ではないが、マップは大石寺を参考にする。ゾンビの集団に追われた愛原達が逃げ込んだ、とある宗派の大本山。既にクリーチャーの巣窟と化している寺院からの脱出を図る)、市民病院(まあ、ホラーと言えばやっぱり病院なんで。クリア条件はまだ未定)、市役所または警察署(バイハザード対策の最前線で、愛原達は何を見る?)、アンブレラ・ジャパン研究所(アメリカでもTウィルスの開発・実験が行われていたが、日本も例外ではなかった)、地方テレビ局(テレビ電波を使って外部に救助を取ると同時に、クリーチャーの巣窟と化したテレビ局からの脱出を図る)
 全て使用するのか、或いは一部だけしか使わないか不明。
 尚、ステージは順不同。
 愛原学の協力者(名前不明):相棒兼助手(実は愛原には助手がいた。今回も事件解決の為に同行)、警察官または市役所職員(町の警察官また市役所の職員。勤務終了後または非番中、たまたま愛原と同じレストランで食事をしていた。警察署または市役所ステージでは彼の先導で庁舎内を探索する)、鉄道職員(市内を走る私鉄の職員。電車の運転免許を持っている。駅周辺や駅構内でのステージでは、彼が先導)、警備員(大寺院の警備員。警備会社からの派遣によるものではなく、直接雇いの『守衛』。大寺院ステージでは彼が先導)、市民病院の医者?、テレビ局のスタッフ?

 他にアイディアがあればお願いします。
 あ、ステージに学会の会館だとか顕正会の会館とかはダメですよw
 
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“Gynoid Multitype Cindy” 「ボーカロイドの謎」 2

2016-06-21 21:29:11 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月3日15:00.天候:曇 埼玉県さいたま市西区・DCJロボット未来科学館]

 ゲリライベントの打ち合わせは無事に終了した。
 リンが思わぬ損傷をしてしまったことについて懸念があったが、あくまでも単なる事故ということで、即座に修理すれば済む話とした。
「ねぇ、博士」
「なぁに、リン?」
「リン、右腕“ケガ”しただけだよね?」
「そうよ」
「それなのに、どうして『頭』も診ているの?」
「ギクッ!……一応、ソフト面に異常が無いかどうかをチェックしているのよ」
「別に、異常なんて出てないYo?」
「あ、いや、だから念の為よ、念の為」
「いいからリン、ドクターの言う通りになさい。ライブ中に異常が発生したりしたら大変でしょう?」
 一応、シンディがリンを損傷させた責任を取って、ずっと立ち会いをしている。
「早くレンと歌いたいのに……」

 因みにレンもまた、ソフトウェア関係のチェックをアリスによって行われた。
 で、その結果は……。
「特に、変な所は無かったね」
「マジか!?……リンとレンだけが特別ではないということか」
「“東京決戦”では、試作機6兄妹達が全員で歌ったわけでしょう?その時、何か起きたのかもしれないね」
「アルバート常務が生きていたら、ボコして吐かせるところなんだが……」
 敷島は腕組みをして考え込んだ。
「社長、そろそろ出ませんと、リンとレンの取材が……」
 リンとレンのマネージャーとして採用された敷島の部下が申し出た。
「それもそうだな。いいや、俺達は後で帰る。キミは先に車で会社に戻ってて」
「いいんですか?」
「バスと電車で帰るよ」
「分かりました」
「リン、レン、そういうわけだから、帰る仕度してくれ」
「はーい」
 リンとレンは研究室から会議室に戻って行った。
「それより、アーカンソー研究所からガメて……もとい、頂いて来たマーティはどうなった?」
「どうって、あなたこそ水族館への売り込みはどうだったの?」
「精巧過ぎて信じてもらえなかった。『水族館ナメてんのか』と、逆ギレされたり……」
「だから無理があるって言ったのよ!」
 恐らくデイライト・アメリカも、良い厄介払いだったのだろう。
「ここで展示できない?」
「人魚が泳げる水槽がどこにあるのよ!」
「分かった、分かった。引き続き探しておくよ。で、マーティは?」
「電源切って、箱の中に保管してあるよ」
「三叉股の槍でマルチタイプと互角に戦う力を持っているのになぁ……。海上自衛隊か海上保安庁辺りで買い取ってくれないかなぁ……」
 要は転売目的で購入した敷島だった。
「いい加減に転売先見つけないと、保管料請求するってよ?」
「分かったよ。あとはうちの会社で保管しておくから」
 敷島は慌てて手を振った。

「お姉ちゃん!修理終わった!?」
 エントランスホールに行くと、“展示品”であるマルチタイプ8号機のアルエットが掛け寄って来た。
 ギュッとシンディに抱きついて来る。
 番号は欠番になっているとはいえ、一応、続きの番号となっている。
 だが、アルエットとは同じマルチタイプでも規格が違う為に、実妹というよりは従妹という感じになるシンディだった。
「ああ、一応ね」
 アルエットは軽量化・小型化をコンセプトに製造されたこともあり、それに成功はしたが、12〜13歳程度の少女のようになっていた。
「アルるん、来週よろしくねー!」
「来週、イベントで来るから」
 鏡音姉弟もアルエットに笑って話し掛ける。
「いいなぁ!私も歌いたい!」
「マルチタイプに歌唱機能は無いから……」
 シンディは従妹機に残念そうな顔をした。
「アルるんは楽器が得意だから、リン達の歌の伴奏やってくれればいいんじゃない?」
「ああ、まあ、会議の打ち合わせで、そんなこと言ってたっけ」
 シンディは自分の髪をかき上げた。
「おーい、もう出発するよ!」
 マネージャーが車をエントランス横に着けて、迎えに来た。
「はーい!んじゃ、またねー!」
「さようなら」
 リン達は足早にエントランスから外に出ると、車に乗り込んで去って行った。
「ま、そういうわけだから、歌は諦めて、伴奏でイベントの手伝いしてくれればいいよ」
 と、シンディは後ろからアルエットを抱き寄せて言った。
「はーい」
「ん?そういえば萌はどこだ?萌もいるんだろ?」
 と、敷島。
「井辺プロデューサーが来れば、まるで飼い主が帰って来た犬のような反応するんだけどねぇ……」
 シンディは皮肉めいた顔になった。
「誰が飼い犬ですか!」
「うおっ、萌!?」
 いつの間にか敷島のスーツの上着の中に隠れていた。
 唯一の妖精型だけに、これはとても珍しがられている。
「ボクは翔太さんが好きなだけです!翔太さんを是非オーナー登録してください!」
「ロイドが人間選ぶかよ……。ジャニスやルディじゃあるまいし」
 敷島は呆れた顔になった。
「ジャニスやルディのメモリーを、もう少し洗えば何か出て来るかもしれないな」
「それは捜査当局の解析結果を待つしか無いわけね」
「まあな」
 いつの間にか科学館の中庭にはビニールハウスができていて、ゴンスケはここでもイモ栽培をしているようである。
 どうやら年がら年中、イモ栽培をしているようだ。
 できたイモは、館内のカフェテリアの料理に使われたり、たまにイベントで無料配布が行われている。
「常設展示として、大水槽でもあればなぁ……」
「だからムリだって」

 敷島とシンディは金曜日ということもあり、今日はさいたま市内のマンションに帰ることにした。
「ボーカロイドを開発したのは、南里所長だ。それに平賀先生も手伝ったことになっている」
「そうね」
「だけど、どうしてウィリーはボーカロイドを造らなかったんだ?」
「それこそ、研究性の違いってヤツでしょ。ドクター南里がバージョン・シリーズを造ったわけじゃないでしょう?ドクター十条が執事ロイド造ったわけじゃないよね?」
「まあ、そうなんだが……。バージョン・シリーズやキールはともかく、どうして南里所長がボーカロイドを作ったのかが分からないんだよなぁ……」
「姉さんなら何か知らないかしら?」
 と、リアシートに座るシンディが口を挟んだ。
「エミリーかぁ……。エミリーは多分知ってるだろうが、普通に聞いても教えてくれないだろうな……。!」
 敷島はちょうど信号が赤になったので、車を止めた。
 その時、ハッと気づく。
「そういえばエミリーの奴!」
「なに?」
「南里所長が亡くなって、平賀先生がエミリーを相続したんだけど、確かあの時、エミリーは所長から託された遺言を全部話していなかったな!」
「それよ!ボーカロイドの謎について、やっぱり墓場まで持って行かなかったんだわ!」
 いや、墓場まで持って行くつもりだったのだろう。
 か、もしくは本人も迷っていたか。
 何しろ、エミリーにはあの世まで一緒に来て欲しいと言い残した反面、財産は全て平賀に譲り、当然エミリーもその財産に入っているわけだが、平賀が相続したら、平賀の言う事を聞くようにとも言い残した。
 その平賀がエミリーの稼働停止を許さず、今後とも人類の役に立つようにとの命令を出し、今に至っている。
「でも、エミリーに聞いても答えてくれるかな?」
「それだよねぇ……。シンディ、何かいい方法無い?」
「……と、申されましても……。姉さんは、かなり口が堅いので。頭も固いですけど。ま、尻は軽いですけどねw」
「そうか!キールみたいなヤツがいれば、そいつを送り込んで吐かせるという手もあったか」
 何しろ、エミリーも情に脆いところがあり、妹のシンディかわいさに、昔は敵対していたにも関わらず、その接近を敷島達に伝えなかったり、キールに絆されて情報を流してしまったこともあった。
「シンディ、今、エミリーが好きなアンドロイドはいるか?」
「知りませんよ、そんなこと。何でしたら、私が面と向かって姉さんに聞いてみますよ」
「大丈夫なのか?」
「まあ、52.25%の確率で『流血の惨を見る事、必至であります』」
「ダメじゃねーか!!」

 ボーカロイドの隠された機能が何なのかは、今しばらく解明に時間が掛かりそうである。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「ボーカロイドの謎」

2016-06-20 21:35:18 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月1日09:00.天候:晴 東京都江東区豊洲・敷島エージェンシー]

「おはようございます」
「おはようございます!」
 社員を複数抱えるようになってから朝礼を行うようになった敷島エージェンシー。
「今日から6月になり、暦の上では夏になります。特に営業で外回りを行う担当にあっては、夏バテや熱中症に注意してください。ボーカロイドも精密機械の塊ですので、熱は大敵です。御自身の体調はもちろん、マネージメントを行うボーカロイドの体調も気づかってください。端末のアラームが鳴ったり、ボカロ本人が体調不良を訴え出したら、すぐにマニュアルに則った対応を行うように」
 敷島が社員達に訓示を行っていた。
「……というわけで、今日も1日頑張りましょう!」

 社長室に戻ると、敷島の机のPCに電子メールが届いていた。
 それはアリスからのもので、試しにミクとLilyをサンプルとして、ある調査をさせた。
 詳しい結果を出すことはできなかったが、Lilyにあっては、そもそも機能として電気信号を音楽に換えて歌う能力自体が無い。
 試作機と量産機という呼び方で誤魔化されていたが、どうも、そもそも試作機たるミク達と量産機であるLilyとは用途が違ったのではないかと思った。
「うーん……」
「社長。取りあえず、コーヒー入れたわよ」
 ここでは社長秘書という用途で稼働しているシンディが、コーヒーを入れて来た。
「ああ、ありがとう」
「そんなにミクのことが気になるの?」
「…………」
「確かに、ミク達の歌でバージョン・シリーズ達の指令がメチャクチャになったのは事実だよ。でも、どうしてその時から調べなかったの?」
「元々ボーカロイド自体に、そういう付加機能があったのかと思ったんだよ。で、悪用されるほどのものでも無いんだと思ってた。だが、アルバート常務の話がどうも気になる」
「ミクじゃなくて、リンとレンだけだったりして?」
「何だと?」
「可能性は無くない?」
「うーむ……」
 その時、社長室のドアがノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
 入って来たのは井辺。
「社長、MEGAbyteが番組制作会社と打ち合わせがあって、ちょっと出てきますので……」
「ああ。いいよ、いちいち俺に断らなくて」
「あ、いえ。鏡音さん達が、イベントの打ち合わせで近くまで行くので、ついでに乗せていきます」
「あ、そうなのか。……リンとレンは今日のスケジュールは……埋まってるか。さすが売れっ子だ」
「鏡音さん達が何か?」
「いや、何でもない。気を付けて行ってきて」
「はい」
 井辺達が退出すると、敷島は自分のスマホを出した。
「あ、もしもし。アリスか?今月の科学館さんの週末イベントはどうなってる?……GGRKS?あー、そうかよ!急きょ、こっちに回してもらえるボカロのイベントはあるか?……いや、もしかしたら、アルバート常務はリンとレンだから狙ったかもしれないと思ってさ。あれがミクやMEIKOとかだったら、興味が無かったかもしれない。……そう。だから、リンとレンを徹底的に洗ってもらいたいんだ。一応、あいつらも敷島エージェンシーの売れっ子だからな、ちゃんとした理由が無いと連れ出せない。そっちで何かイベントがあって、それに出る為となれば、いい大義名分になるんだ。……ああ、頼むよ」
 敷島は電話を切った。
「リンとレンか。確かに、不思議なコ達ではあるよね」
 と、シンディ。
「双子機の特性があるかもしれないな。それが何かあるのかもしれない」
 もちろん、相互に信号を送受信することは可能。
 リンとレン、お互いに離れていても、独自の緊急信号を持っている。
 これは他のボカロには無い。
 でも、それが何だというのだろう。
 それとも、それは違うのか。

 しばらくして、DCJの運営するロボット未来科学館のイベント企画担当者から電話が掛かってきた。
 それによると、PRの関係で今週末はさすがにムリだが、来週末なら『ゲリライベント』と称して行うことが可能かもしれないという。
 その為、詳しい打ち合わせをしたいので、なるべく早く来てほしいとのことだった。
「リンとレンのスケジュールを開けておこう」
「打ち合わせだけなら、社長だけでもいいんじゃない?」
「なるべくリン達への調査の機会を設けたいからな」
 敷島は片目を瞑った。
(ああ、なるほど)
 シンディは即座に理解した。
(せっかく科学館に来たのだから、ついでにリンとレンを『健康診断』するってことね)

[6月3日10:00.天候:雨 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

「社長、何もこういう所でのミニイベントより、テレビ出演の方がデカくないですか?」
 新たにリンとレンのマネージャーとして入社した社員が、不満そうに敷島に言った。
「まあ、普通はそうなんだが、今回はちょっと特別でな……」
 ハンドルを握る敷島が、ばつの悪そうな顔をしていた。
 助手席に座るシンディが、
「科学館様を敵に回すということは、私のオーナー様を敵に回すということなのよ。察してあげてよ」
 後ろを振り向いて、マネージャーにウィンクした。
「頼もしい奥様で」
「ボクは別に、歌のお仕事であれば、何でもやりますよ?」
「リンも!」
「うん。うちのボーカロイドも、頼もしい奴らばっかりで助かるよ」
 敷島は業務用駐車場に車を止めた。
 そして通用口から中に入り、警備受付に向かう。
「おはようございます。敷島エージェンシーの敷島です。打ち合わせに伺いました」
「これはどうも、お疲れ様です。今、担当の者に連絡しますので」
 警備室の中にいた警備員が敷島達の方を見てそう言うと、すぐに室内の電話で連絡していた。
 もちろん、アポありでの来館である。
 敷島達は、すぐに奥の会議室へ通された。

「あなた達、どこか体の具合は悪くない?せっかく来たんだから、点検しておくわよ?」
 イベントの打ち合わせの後で、アリスが待ち構えていたかのようにやってきた。
「あ、ボクは大丈夫です」
「リンも絶好調ですYo〜!」
「お、お前らなぁ……。(そこは空気読めよ!)」
「社長、夕方から雑誌の取材がありますので……」
「夕方からだろ?ちょこっと整備する時間くらいあるだろ?」
「ですが……」
 と、そこへ、
「ああっと!」
 シンディが部屋から出ようとしたリンに体当たり。
「きゃあっ!!」
 それはリンの監視端末から『損傷』のアラームが鳴るほどであった。
「リンの腕が!腕がぁっ!」
 リンは折れた自分の右腕を左手で押さえながら泣きじゃくった。
「シンディ!何てことするんだっ!」
 レンがシンディを睨みつける。
「ご、ごめんなさーい!左足がもつれちゃって……。ドクター、リンを優先して修理するのは当然ですが、その後で私も診て頂けますか?」
「も、もちろんよ!リン、早くこっちへいらっしゃい!すぐに直すわ!」
「痛いよォ!」
 会議室を出て研究室に連れて行かれるリン。
「あ、あの、社長……。シンディさん、わざとぶつかったような……?」
 マネージャーがまた余計なことを言い出したので、敷島は、
「黙ってろ!」
 と、一喝した。

 こうして、まずはリンの修理兼調査が始まった。
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本日の雑感 0619

2016-06-19 22:57:48 | 日記
 帰り際、強い霧雨に当たった罪障消滅中という名の福運下落を受けた私である。
 ま、霧雨程度で済んだのだから良しとしよう。
 霧雨……霧雨ねぇ……。
 “東方Project”のメインキャラクター、霧雨魔理沙をモデルにしたのが、“大魔道師の弟子”のエレーナ・マーロンである。
 モデルの霧雨魔理沙は愛らしいホウキ乗りの魔法使いなのだが、私が彼女をモデルにして稲生勇太達への敵キャラとして出した時は、どちらかというとブスキャラだった。
 が、しかし味方となった現在ではモデルの通りに愛らしいキャラクターになっている。
 今ではどちらかというと、メインキャラクターというより、コメディリリーフや狂言回し的な立場で登場させることが多い。
 本来はイリーナがその立場なのだが、彼女が何らかの理由で不在の時に、よく彼女が現れるのはこの為だ。
 ……って、そんなことはどうでも良い。

 “慧妙”5月1日号のコラムのおかげで溜飲の下がった法統相続についてだ。
 件のコラムでは結婚して子供がいるにも関わらず、その子供に仏法を継がせないのは謗法である旨が書かれている。
 また、継がせようとしても反発して謗法を犯し、何度諌めてもそれを改めない場合は勘当せよという厳しいものだ。
 日有上人の化儀抄なんだってね。
 法統相続の話になる時、既に結婚していることが前提で話が進む理由も分かった。
 要は、法統相続というのは結婚してから考えるものであって、私らのような独身者が現段階で考えるべきことではないということだ。
 なので、法統相続の為に結婚するというのは間違いということになる。
 あくまでも自然な男女の縁でもって結婚し、子供もできたからには、この教えを継がせなさいということであるようだ。
 したがって、現段階において(恐らくは今後も)その立場に無い私らは、引き続き他人を折伏して行くことになる。
 この日有上人の化儀抄を見て、私は顕正会を思い出してしまった。
 顕正会の女子部・婦人部では、浅井会長が表立って指導していないものの、顕正会活動に協力的でないばかりか、容認もしない彼氏や旦那とは別れろという空気が蔓延しているのだという。
 そして実際に別れたり離婚したりした場合、むしろお祝いされるとかされないとか。
 いつぞやだったか、パラパラ茜のオバハンも似たようなことを書いていたね。
 顕正会員が日有上人の化儀抄を知っているとは思えない(それどころか、日有上人が第何世の猊下様かも知らないだろう)が、その教えを拡大解釈すると、子供だけでなく、配偶者においても謗法を改めないようであれば別れろという風に捉えることも可能であり、正に顕正会ではそれを実際に行っていると言える。
 顕正会では法統相続についての指導は行っていない。
 何故なら、行う必要が無いからである。
 一家広布は大変喜ばしいこととされてはいるが、実際に顕正会に入会できるのは高校生以上からだというのは有名な話である。
 それより他人を折伏することが最優先とされ、それは戦力にならない子供を入れるより、即戦力を募集しているからだと見ることは可能だし、多分当たっている。
 洗脳大好きの顕正会なら、むしろ子供のうちに入信させて、子供のうちから洗脳教育を行えば良いと思うが、何故だかそれをしない。
 それよりも数そのものを増やしていることを優先しているからだというのは、容易に想像がつく。
 数だけ増やしたい所にとっては、法統相続というのは実は最も効率の悪い教化であるということだ。
 だから、顕正会ではその指導を捨てた。

 グタグダになってしまったが、顕正会が奇しくも日有上人の化儀抄と似たようなことをしているというのは、何ともまあ皮肉であると思ったまでだ。
 法統相続という言葉は知らなくても、恐らく家族持ちの会員なら、きっと子供にも勤行はさせているはず。
 そして高校生になったら、入会させようと考えているだろう。
 法統相続に掛ける思いは、実は法華講員も顕正会員も変わらない。
 ただ、私の場合、いずれにおいても一代法華で終了するという所も変わらないということだ。

 確かに所属先は変わったし、活動内容も変わった。
 足しげく大石寺参詣を行うことで、氷山の一角程度の知識だが、顕正会にいては分からない仏法についても分かるようになってきた。
 しかし、本質的にはまだ私は何も変わっていないのだろうと思う。
 差し当たり、“顕正会版人間革命”と“妖狐 威吹”は、実写版“人間革命”並みの黒歴史ということで。
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