「食」べることは「人」に「良」いを実感します。

同じ作者の最新作「喋々喃々」を読んでから、小川さんのデビュー作で発売(08年の1月)当時、テレビなどで取り上げられて、新人作家の作品ながらベストセラーになった本だということを知って読んでみた。

一切合財を持ち逃げされてしまった主人公(若い女性)
残っていたのは祖母の形見「ヌカ漬けの床」だけ。
やむなく、有り金をはたいて、無一文で、軽蔑している不仲の母のいる故郷に帰る。
離れを借りて食堂レストランを開く、レストランは一日に一組の客しか扱わない。
彼女の調理する料理をいただいた人たちは、みんな幸せになり悩みも解決する。
「幸せになれる食堂」として評判になる。

手際と発想は天才シェフの域でもある。
メニューのない調理の原点は「命を頂く」。
ちょっとしたきっかけから「母との確執」が解けていく。
厳しい言い方をすれば、小説としての表現は粗いが、
ファンタジーとしてみれば、終わりがちゃんと着いている。
読み始めると、先が気になる本だ。

2年前に、東京渋谷の東急Bunkamura の映画館で観た
ドイツ映画「厨房で逢いましょう」
テーブルは3つしか置かない保養地のレストラン。
孤高の天才シェフが平凡な主婦に恋をする。

「官能料理」を口にする彼女は、エクスタシーが身を満たす。
彼の想いは料理に注がれ、その味は舌と心をとろかせる。
レストランに来た客たちは、彼の料理に堪能し恍惚の表情で、
サラの一枚一枚を舐めつくす。
その後ある事件で、シェフは街にいられなくなって姿を消す。
夫に死なれて彼女もまた、子どもを連れて他国へ引っ越すことになる。
そして、国境の町の食堂でシュークリームを一つ買う。
子どもと半分ずつ分け、口に入れた……女の顔が徐々にほころんでいく。
この「食堂かたつむり」も映画化されることが、決まっているようです。