写真は山の幸を道ばたで売る様子。上は主に乾燥キノコを扱っている。下はキノコ4種とスズメバチの巣。いずれも一般の農産物よりもはるかに高い値段で取引される。昆明より61キロ東に離れた九郷風景区付近にて撮影。このあたりはまだまだキノコの生える森が広がっている。
農民らは竹で編んだ手提げ駕籠にハスの葉を敷き、その上に丁寧に並べたキノコを並べていた。(市場の食材は朝に揃っているものが多いが、野生のキノコは例外。)
【流通は午後から】
雲南で誇るべき食材の一つにキノコがあります。食べられるものだけで、その数およそ800種。地球上に食用キノコは2000種ほどあるそうですが、その半分弱を雲南で味わえる、というわけです。
6月から半年続く雨期に入ると、昆明の市場にはいつもある椎茸、マッシュルーム、エノキダケとは別に野生キノコの区画ができます。
野生キノコが市場に並ぶのは夕方。開発が進み、森林は減少していますが、まだまだ昆明の周縁部の山は林に覆われています。そこで農民らは朝から山深いところまで足を踏み入れては、貴重なキノコを見つけてくるのです。そして昼ごろから公共バスなどにゆられて市場や料理店、観光客のいる道ばたへと、自慢のキノコを持って現れる、というわけです。
そのためか野生キノコ売り場の人はプロの売り子ではなく、多くは農民です。だから料理法などを聞こうとしても、公用語の中国語では会話が成り立つことは稀。弾むような音感を持つ雲南語で、こちらの言いたいことは伝わるけど、なかなかあちらの言葉は理解できません。
【たくさんのキノコの中の松茸】
そんな中で会話の成り立つ人に日本人とわかると、必ず指し示されるのが「松茸」。「中国産」として日本のスーパーに並んでいるアレです。雲南でも人気はありますが、
「もっとおいしいキノコが沢山あるのに、なぜ、日本人は松茸が一番、なのだろう」
とよく言われました。
私もキノコに詳しくはないのですが、ひょっとして中国産の松茸と日本産のものは見た目は同じでも、じつは別物なのではないでしょうか? 本場で食べても、シャキシャキとした歯ごたえはともかく、やはり日本のものより香りが薄いようです。日本では中国産は二流品扱いされていますが、雲南でも高価なキノコではあっても、最上の部類、とはいえないのでした。
とはいえ、換金作物としては最上のキノコです。そのため旬の6月~7月ともなると、チベット国境付近のシャングリラ周辺の人々は、日本向けの松茸取りのために、村が空っぽになることも。同時期に野生のブルーベリーも収穫するので、やりがいも2倍に。
そそり立つ急峻な山肌で収穫に精を出すターバン姿のチベット族の人達を見たときには「ここまでしても、日本産より安いのか」と驚きました。
同じく、シャングリラ周辺の特産品に冬虫夏草があります。高価な漢方薬として日本でも人気の、冬は虫で夏に草になるという不気味なものですが、れっきとしたキノコです。夏に生えるのは草ではなく蝙蝠蛾に寄生したキノコが芽を出したものなのです。
(つづく)