写真上からスズメバチの炒め物(蜂の子+成虫)、写真下は料理屋の店先に置かれていたスズメバチの巣。いずれもすべて食用(写真上は2004年10月、文山にて撮影、写真下は2010年昆明にて撮影)
【国家戦略のハチミツ増産】
ヤハシという雲南に自生する植物が1970年代から、ずいぶんと注目されていたことがわかりました。でも、食料不足だった当時の中国で主食にはとうていならないのに、なぜ研究をすすめようとしていたのかというと。
じつはハチミツの研究と増産は国家規模の戦略だったのです。
養蜂はなんといっても穀物飼料と土地を使わずに、経済価値を生み出します。農家の副業として推奨すれば、打ち出の小槌になると考えたのです。
こうして徐々に生産量は拡大し、改革開放が始まりつつあった1986年にはハチミツの総生産量は17万2000トンで世界2位に。2002年にはハチミツ20万トン、ローヤルゼリー2000トン以上、花粉3000トン以上、プロポリス300トン以上で、いずれも世界1位となりました。
(中国、アメリカ、アルゼンチンが世界3大生産国。それにトルコ、スペイン、ブラジル、カナダなどが猛追する)とくにローヤルゼリーは世界シェアの95%以上を占めています。
海外では残留農薬問題でたびたび禁輸措置を受け、そのたびに改善策がなされる、水分が多い、などの品質面の問題はありますが、ハチミツが強力な輸出向け商品であることは間違いありません。
【ハチを食べ、蜂の子を食べ】
実際のところ、外資の入ったスーパーや直売店はともかく、雲南の市場ではハチミツは売られておらず、見かけるのは、ハチと生きた蜂の子と巣でした。いわずもがなですがスズメバチです。
ハチの食用は雲南では本当に一般的で、ちょっと田舎の食堂に行けばたいていオーダーできました。(昆明の外れ、文山など)
頼むと、ハシで蜂の子を一つ一つ丁寧にほじって、さらに成虫のスズメバチも大事な食材として、さっと油と唐辛子などで炒めて出してくれます。
蜂の子はとろりと濃厚。ハチも食べられるというのですが、かつて道ばたに落ちていたスズメバチを見つけて箱に入れて宝物にしていたら、父から、死んでも毒があるから気をつけろ、と注意された記憶があり、手を付けずじまいでした。
日本も信州などで蜂の子を食べる風習があるのは知っていますが、日本でも成虫になったハチも食べているのでしょうか?
一緒に皿を囲んだ人がいうには「エビの唐揚げみたい」とのことでした。
とくにその後、その人が毒に当たった様子もないので、
成虫のスズメバチも雲南では食べても大丈夫なようです。
(つづく)