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中国の酒・パイチュウ編7 「東方見聞録から1

2016-11-19 13:39:51 | Weblog
写真は、シーサンパンナの蒸留装置の大筒のような樽の底部。このように下側は緩く編んだざるのようになっていて、一ヶ月ほど発酵させた穀物が落ちないように、かつ、下からの熱気と蒸気は通す構造となっている。

【蒸留酒? 醸造酒?】
現在でこそ、雲南の農村部での主流は蒸留酒ですが、以前はどうだったのでしょう? 
元のフビライハーンの時代の中国を語ったマルコ・ポーロの『東方見聞録』には現地の飲食物がかなり具体的に描かれています。
じつは通説では、マルコ・ポーロは雲南には立ち寄っていないので、又聞きで信用できない(たとえば、「日本は黄金の国・ジパング」として描写されたように)と、いわれていますが、近年の時代考証では、雲南については相当数、当時の実情を踏まえていることがわかってきたので、取り上げます。

さて、今の四川省西昌市
(雲南省の北部は、馬の鞍の背のようにたわんでいて中央部が南側にへこんでいるが、そこに四川省が突き出た部分にある:原文は「Gaindu」建都)
の記述には、

「(建都は)葡萄酒も葡萄畑もないが、多くの香味料で小麦や米の酒を造る。とても美味しい飲み物だ

と書かれています。

昆明(原文は「Iaci」)での描写でも、酒を飲んだ感想が出ています。
現在の昆明の様子とも重なるので、少し長めに引用します。

「商人や職人がたくさんいる。[人々は]何種類もおり、マホメットを崇拝する者、偶像崇拝者、それにわずかだがネストリンのキリスト教徒がいる。麦と米が豊富にあるが麦のパンは食べない、この地方では体によくないからである。米を食べ、香味料とで米の飲み物を造り、とても美味しく澄んでいて、葡萄酒と同じように人を酔わす。今から言うようなお金を持っている、白いタカラ貝、海中に見付かり、犬の首につけるあれ、を使い(以下略)」

昆明では米と何らかの香味料で酒を造り、建都では小麦や米に多くの香味料で、澄んだお酒をつくっているようです。
 たとえば日本でも人気のある(私の大好きな)ベルギービールの「ヒューガルデンホワイト」がコリアンダーやオレンジピールを入れることで口当たりをフルーティーでさわやかに仕上げているように「香味料」で風味を出している、ということでしょう。

 いずれ大都、昆明、いずれの記述からも美味しいお酒だったということはわかります。ですが、この記述だけでは焼酎のような蒸留酒か、日本酒やビールのような醸造酒か断定
はできません。
 ですが、とっかかりはありそうです。

 たとえば「葡萄酒と同じように」酔う。ここから考えられるのは醸造酒ではないかということ。

もし蒸留酒だったらアルコール度数がまったく違うので、比較するお酒の種類が違ってくるか、たとえば「ピリピリしたり、口の中が熱くなったり」といった反応や酔い方について驚きの記述が入ってくると思うのです。

また「澄んだお酒」という記述からはどぶろく(濁り酒)ではなく、ちゃんと漉した醸造酒なのでしょう。日本酒や紹興酒と違って、香味料が入っているところが華やかですね。
次回以降、数回にわたって、より歴史の真実にせまっていきます。細かいお話になりますが、よろしかったらおつきあいください。
(つづく)
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