奈良マラソン参加のついでに、奈良の観光もすることにした。観光の一番の目的は、興福寺の国宝館にある阿修羅像を見ることであった。事前に、国宝館の混雑状況を調べたら、入館は9時だが、入館のチケットを購入するのに8時くらいから行列が出来て9時からでは、1時間2時間待ちは当たり前になるような話だった。そんなこともあって、前日夜立ちで奈良まで来て、午前7時に奈良県庁の公共駐車場に車を止め、すぐに興福寺に向かった。
幸い、まだ人影は少なく開館時間にはまだまだ時間が余っていた。とりあえず、周辺を散策しようと興福寺周辺を歩くことにした。まずは、南側にある猿沢の池に寄る。興福寺が行う「放生会」の放生池として造られた人工の池である。猿沢の池には、こんな七不思議があるそうだ。
·澄まず
·濁らず
·出ず
·入らず
·蛙はわかず
·藻は生えず
·魚が七分に水三分
猿沢の池越に眺める興福寺の五重塔は、なかなか絵になる風景である。
猿沢の池から石段を上がり、興福寺の境内に入る。境内に入るとすぐ右側に世界遺産に登録されている南円堂がある。堂の扉は閉ざされたままとなっており、1年のうち1日しか開けられないそうである。朱色に塗られた外回りは、特別な建物という趣を感じさせてくれる。
南円堂の奥には、三重塔がありこれも国宝になっている。
北円堂の横を通り、五重塔と東金堂の前に出る。五重塔(国宝)は、高さ50.8メートルあり木造塔としては東寺五重塔に次ぎ日本で2番目に高いそうだ。また東金堂(国宝)は、唐招提寺金堂を参考にした天平様式で、堂内には本尊の薬師如来をはじめ日光・月光(がっこう)菩薩像、木造維摩居士(ゆいまこじ)坐像(国宝)木造文殊菩薩坐像(国宝)、木造十二神将立像(国宝)等、国宝がずらっと安置されている。特に薬師如来を守護する十二神将の躍動感溢れる姿と配置は見ごたえがある。ただ、この時点ではまだ開館してなかったので中の拝観は、国宝館拝観後に立ち寄った。
一通り興福寺内を見て回ったが、国宝館の開館まではまだ時間があった。8時を回っていたが、行列ができる様子もないので近くの奈良公園まで足を伸ばし時間を潰すことにした。奈良公園といえば鹿で有名だ。いたるところで鹿がゆうゆうと歩きまわっている。公園内には約1200頭もの鹿がいるという。鹿は春日大社の神使であり、古くから手厚く保護されてきており、餌付けされていない野生による繁殖で増えているという。ただ、鹿せんべいを買ったりすると観光客に大群でねだりにくるので気が抜けない。
公園内には、明治期の洋風建築の代表例として国の重要文化財に指定されている奈良国立博物館がある。なかなか洒落た建物である。毎年秋に実施される「正倉院展」の会場でもあるそうだが、開館時間には早いので建物だけ見て興福寺に戻った。
8時40分頃、国宝館の前の様子を見に行くと、数人が開館を待っているのが見えた。しかし、行列というほどでもない。大混雑するという予想は外れ一安心したが、開館時間も近いので待つことにした。9時丁度に開館し中に入った。いよいよ阿修羅象に対面できると思うとワクワクした。最初の展示物から、解説を読みながら進んでいくといつの間にか、たくさんの人が入場していた。あっという間に大混雑である。開館時間に合わせて、観光バスで大勢の人が来館して来たようだ。それでも開館と同時に入場できて大正解だった。混雑はしていたが、展示物の解説を読みながら展示物をそれぞれじっくり見て回ることができた。高さ5.2mもの巨大な木造千手観音立像(国宝)、板彫十二神将像(国宝)、法相六祖坐像(国宝)、木造金剛力士立像(国宝)、木造天燈鬼・龍燈鬼立像(国宝)といった国宝が立ち並び、お金を払って拝観するだけの価値があるすごい作品ばかりであった。
そして、一番見たかった八部衆立像(国宝)は国宝館の最後の場所に展示されていた。五部浄は胸から下が失われているが残りの7体は完全に立像で残っている。沙羯羅、鳩槃荼、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、畢婆迦羅とそれぞれの立像は個性的で仏像とは違い、攻撃的な衣装をまとい興味深い作品である。ただ、最も攻撃的な戦闘神とされる阿修羅は、唯一武具をまとわず優しげで憂いや悲しみを感じさせる表情を持ち多くのファンができたのも頷ける作品であった。今までテレビで見ただけであったが、本物を見ることができて大満足であった。ただ、残念ながら写真撮影が禁止されていたので生写真はない。
国宝館から外に出ると、見学者の行列はなく一頃のブームは去っていたようだ。これから行く人は、じっくり見ることができそうだ。
興福寺の見学が終わると、奈良公園から東大寺に向かった。門前では、若草山をバックに修学旅行の記念撮影が行なわれていた。中学生の時の修学旅行もこんな感じで写真撮っていたのだなと思うと懐かしかった。
東大寺の大仏殿に向かう。「世界最大の木造建築」と言われるだけあって、さすがに大きい。
大仏殿に入ると、真正面に高さ約14.7メートルの大仏様が鎮座している。
東大寺大仏殿の中には当然、何本かの柱がり、その中の1本に穴が開いている。ここを通り抜けると幸せになるとか、無病息災だとか言われているようで、細い女性が通り抜けていた。
東大寺を出て、正倉院へ向かった。正倉院の周辺の紅葉はまだ残っていた。
正倉院も見学したかったのだが、土曜日曜は開館しておらず平日だけとのことで、塀越しの中を垣間見ながら、奈良マラソンの受付会場である鴻ノ池陸上競技場へと歩いて向かった。
その2に続く。