石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュース解説)エネルギー大国、米中の衝突(その1)

2006-05-18 | その他
1.はじめに
 石油の確保をめぐる米国と中国の対立の構図が鮮明になってきた。米国は世界の石油の4分の1を消費しており、中国も米国に次ぐ世界第2位の石油消費国である(因みに日本は第3位)。しかし両国はいずれも国内産の石油だけでは不足するため、かなりの部分を輸入に依存している。特に経済成長の著しい中国は、世界的規模で石油確保に狂奔しており、その結果、米国の国益と衝突するケースが増えている。

 その最初のケースが、昨年々央に起こったCNOOC(中国海洋石油)による米国石油企業Unocal社買収事件である。米議会の強い反対により結局CNOOCのUnocal買収は失敗に終わった。そこで中国はイランに目を転じ、同国とヤダバラン油田の開発契約に調印した。米国はイランを「テロ国家」と名指し、米系企業のイランへの投資を禁じ、さらには日本やインドによるイラン国内の石油・天然ガス事業への参入を強く牽制している。また現在は核疑惑問題で国連制裁をちらつかせている。これに対し中国は安保理常任理事国としてイランの立場に配慮を示し、米国との違いを際立たせている。その外交姿勢の裏にはイランの石油あるいは天然ガスを確保しようとする中国の意図があることは間違いない。

 そして最近の外電は、中国がキューバの石油・ガス鉱区の開発に食指を伸ばしている、と伝えている。メキシコ湾は石油の宝庫であり米国の経済水域内では多数の石油企業が石油或いは天然ガスを生産している。米国にとって目と鼻の先の社会主義国キューバは何かと目障りである。そこに同じ社会主義国家の中国が進出することは、米国にとって面白くない。折りしもベネズエラなど中南米諸国では反米感情が高まり、石油産業の国有化が叫ばれている。中国のキューバ進出は、米国の中南米での足場が危うくなりつつある状況を見透かしているかのようである。

 米国と中国を石油消費大国として見る見方が多いが、実は両国が世界でも有数の石油及び天然ガス資源の保有国である点を見逃してはならない。米国と中国は共に大国であるが故に自国の石油・天然ガスだけでは需要をまかなえず不足分を輸入に頼るという共通の問題点を有している。それは世界の他の大国、即ち石油・天然ガスのほぼ全量を輸入に頼っている日本、独、仏とも異なり、また石油・天然ガスの輸出で外貨を稼ぐ英国やロシアなどとも異なるのである。

 本稿では、まず米国と中国双方の石油・天然ガスの埋蔵量、生産量及び消費量が世界に占める地位を比較し、さらに最近のエネルギーをめぐる両国の確執(ユノカル買収問題、イラン問題、キューバでの石油開発問題)を取り上げる。そして最後に、地球規模での石油獲得競争を繰り広げる米国と中国それぞれのエネルギー開発に対する姿勢について検証してみたい。
(続く)
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