石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュース解説)エネルギー大国、米中の衝突(その2)

2006-05-21 | その他

2.エネルギー大国:米国と中国

  冒頭に述べた如く米国と中国の石油消費量はそれぞれ世界の1位と2位を占めているが、石油および天然ガスの埋蔵量、生産量と消費量に関する両国の世界ランク(2004年)を示したものが下表である。

                  米国     中国       (参考)世界1位

石油埋蔵量          11位      12位      サウジアラビア

天然ガス埋蔵量         6位      17位     ロシア

石油+天然ガス埋蔵量    10位     14位      ロシア

(同上)生産量           2位      8位      ロシア

(同上)消費量           1位      3位      米国

出典:BP Statistical Review of World Energy June 2005

(注)石油と天然ガスの合計は、天然ガスを石油に換算して合計した数値により筆者が試算した。

(1)埋蔵量

 石油埋蔵量では米国が世界11位、中国が世界12位である。1位はサウジアラビアであるが、その他ベスト10にはOPEC加盟国など純然たる産油国とロシアが入っている。米国は第10位のナイジェリアに次ぐ埋蔵量を誇り、世界12位の中国の埋蔵量はカナダ、メキシコ、アルジェリアよりも多い。また天然ガスについては、米国は世界6位であり、中国は多少ランクが落ちるとは言え世界17位の資源保有国である。米国の埋蔵量は、ロシア、イラン、カタール、サウジアラビア及びUAEの5カ国より少ないが、ナイジェリア、アルジェリアよりも多い。また中国の天然ガス埋蔵量は2.2兆立方米であり、これはノルウェーとウズベキスタン中間に位置しており、世界全体の中では決して見劣りしない。

  それでは石油と天然ガスを合わせた埋蔵量ではどうだろうか。上表に示すとおり米国は10位、中国は14位である。両国とも世界屈指の資源保有国である、と言って過言ではないだろう。しかも米国、中国より上位の国々は、ロシアを含めていずれも石油或いは天然ガスと言う一次産品の輸出によって国家の歳入が支えられているのに比べて、米国と中国はサービス産業、工業製品などの二次・三次産業が輸出の中心を占める産業国家なのである。

(2)生産量

 次に石油と天然ガスを合わせた生産量のランクを見ると、米国が2位、中国は8位である。米国は埋蔵量順位10位に対し生産量の順位は2位であり、また中国も埋蔵量順位14位に対し生産量の順位は8位である。両国共埋蔵量の順位に比べ生産量の順位の方が上位である。このことから両国は、国内需要に対応するため石油・天然ガスをフル生産していることがうかがわれる。

(3)埋蔵量と生産量の関連

 埋蔵量と生産量の関連は次の数式で表すことができる。

   前年末の埋蔵量 + 今年の新規追加埋蔵量 – 今年の生産量 = 今年末の埋蔵量

  即ち、新規追加埋蔵量を上回る生産を行った場合、埋蔵量は前年末を下回り、この状態が長期間続けば国内の石油・天然ガス資源は枯渇に向かうことになる。上表と同じBPの資料で、両国の最近の年末埋蔵量の推移を見ると、まず石油については、米国の石油埋蔵量は過去10年300億バレル前後で推移し、2002年から2003年にかけてはわずかながら減少している。中国の場合は2000年末の179億バレルをピークに毎年減少し2004年末は171億バレルである。これに対して天然ガスについては、米国は過去10年間ほぼ増加の傾向を示しており2004年末の埋蔵量は5兆3千億立方米である。また中国は2002年から2003年にかけて1兆4千億立方米から2兆2千億立法米へと大幅に増加している。

  このことから米国と中国はともに石油の新規埋蔵量の追加が生産に追いつかず石油資源の発見が頭打ちになり、代替手段として天然ガスの発見に力を入れていると言えよう(或いは資源探査の結果として石油ではなく天然ガスが発見されている、とも推測される)。

(4)消費量

 消費量について見ると、石油と天然ガス合計の消費量ランクで米国が1位、中国は3位である(因みに2位はロシア、4位が日本)。但し1位の米国は世界の消費量の4分の1(25%)を占めており、2位ロシアの7.5%、3位中国の5.8%を圧倒している。米国と中国の人口規模を考えると、人口一人当たりの消費量の格差は更に大きくなる。因みにWorld Resources InstituteのEarthTrends(http://earthtrends.wri.org/)によれば、米国の一人当たり年間エネルギー消費量は7,921KG(石油換算)であるのに対し、中国は887KGと米国の10分の1程度である。(因みに日本は米国の2分の1の4,092KG)

  ブッシュ大統領は、米国が「石油ガブ飲み体質」であると警告したが、上記の数値からもそのことがうかがえる。と同時に更なる経済成長を目指す中国の場合、一人当たりのエネルギー消費が今後増加することは間違いなく、十数億人という人口規模を考えると石油・天然ガスに対する需要が急激に拡大するはずである。このため米中の両国政府は石油・天然ガスの国内需要を抑制するために適切な政策的措置をとる必要がある一方で、増大する需要を満たすために石油・天然ガスの供給ルートを開拓し続けなければならない宿命にある。

  こうしてエネルギー大国、米国と中国が地球規模での熾烈なエネルギー獲得競争を繰り広げることになるのである。

 (注)BP統計については石油文化ホームページの拙稿「BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量(石油篇、天然ガス篇、石油+天然ガス篇)」参照

(続く)

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