石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ガスOPEC(天然ガス輸出国カルテル)は生まれるのか?(第4回)

2007-04-18 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)HP「中東と石油」「ガスOPECは生まれるのか?」全文(第1回~第6回)を一括ご覧いただけます。

(第4回)増加するLNG貿易のプレーヤー

  天然ガスは高温高圧の地下から常温常圧の地表に産出された時は気体の状態である。通常はこの気体のままで生産地から消費地までパイプラインによって搬送されている。しかし天然ガスをマイナス162度まで冷却すると液化し、いわゆるLNG(液化天然ガス)となり、体積は600分の1になる。このような低温液化による容量圧縮技術により、従来のパイプラインでは成し得なかった、大量の天然ガスを海を隔てた遠隔地へ輸出することが可能となったのである。

  LNG貿易は、1964年にアルジェリアからフランス向けに輸出されたのが最初である。その後、日本を中心としてLNG貿易は拡大し、1997年ごろにはLNG輸出国はアルジェリアのほかカタル、インドネシア、ブルネイなど9カ国となり、一方LNG輸入国も日本を始め仏、スペイン、韓国など9カ国となっていた。なお米国はアラスカ産LNGの対日輸出と、カリブ海諸国からの輸入の二面性を有しており、従って1997年時点では、LNG貿易のプレーヤーの数は17カ国であった。

  1998年から2005年にかけてLNG貿易は順調に拡大し、プレーヤーの数も増加した。即ち同期間中にトリニダード・トバゴ、ナイジェリア、オマーン、エジプトの4カ国が新たにLNGの輸出国となり、他方、ギリシャ、プエルトリコ、ポルトガル、ドミニカ、インド及び英国の6各国がLNG輸入を開始した。こうして2005年末にはLNG貿易のプレーヤーは27カ国となっている。

  現在、中国がLNG輸入設備の建設を計画している。一方、輸出についてはロシアのサハリンでLNG基地が建設中であり、またかなりの埋蔵量を有しながら消費地から遠いため天然ガスを死蔵しているアフリカの国々がLNG市場に登場するケースも考えられ、今後LNG貿易のプレーヤーの数が増加することは間違いない。

   2000~2005年の世界の天然ガス消費量の伸び率は平均3%であったが、専門家は今後20年間も年率2.4%で増加すると予測している。現在天然ガスの4分の3はパイプラインで輸出され、残り4分の1がLNGで輸出されている。天然ガス全体の需要の伸びに加え、天然ガス輸出に占めるLNGの比率が2010年に31%に達するとの予測もあり、ウッド・マッケンジー社では、世界のLNG市場の規模は、2010年の261百万トンから2020年には488百万トンになるものと見込んでいる。

   このようにLNGの市場が拡大し、そこでのプレーヤーの数が増加することは、天然ガスが石油と同様の国際的な取引の対象となる商品(Commodity)化する可能性を示している。そして天然ガスの輸出国が限られているため、今後LNGは石油と同じように売り手市場になると見込まれている。このことが「ガスOPEC」構想に真実味を与えているのである。

(これまでの内容)

(第3回)天然ガスの消費と輸出の拡大

(第2回)世界の天然ガスを独占する三つの国:ロシア、イラン、カタル

(第1回)プロローグ:ロシアとウクライナの紛争が西欧にもたらした悪夢

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