2.ハッピーな今年のOPEC
OPECは2008年12月以来既に2年近く生産目標量を変えていない。次回総会は12月の予定であるが現在のところ加盟国はいずれも現行の価格水準に満足しており、生産枠を変更しようとする姿勢は見られない。また消費国及び市場からも増産を望む声は上がっていない。従って12月総会でも現状維持が合意され、丸2年を超えて生産目標数量が据え置かれる可能性が高い。
しかしこれまでのOPEC総会の歴史を見ると生産枠改訂が頻繁に行われてきたことが分かる。原油価格が急落し、或いは急騰した時、いずれの場合でも総会ではまずOPEC全体の減産量或いは増産量を決定、しかる後に前回までの生産枠にほぼ比例して加盟各国に割り当てられた。割当の調整ができない場合はサウジアラビアなど一部の国が大幅な減産或いは増産の役割を担った。時として各国間の利害が鋭く対立して国別割当ができない場合は、OPEC全体の減産又は増産量のみの公表にとどめるケースもあった。
そもそもOPECの生産割当方式は1982年4月に始まった。そしてその後、2008年9月までに実に46回にわたって総会で生産枠が改訂されている 。その中には全体の増産或いは減産量を決めただけで国別の割当量を公表しなかったケースが5回あるが、殆どの場合は国別の新たな生産枠が決められた。
2008年12月の総会は同年9月のイラクを除く加盟11カ国の実生産量2,905万B/Dを420万B/D減産し2,485万B/DをOPEC全体の生産目標とした。同年にインドネシアが脱退し新たにアンゴラ及びエクアドルが加盟したが、この2カ国にはそもそも生産枠と言うものがない。従って12月の総会決定は従来の枠に比例配分する国別生産枠方式は採用できず、実生産量を引き下げる生産目標という形にせざるを得なかったのである。
これも生産量変更のケースに加えれば、結局1982年以降の変更回数は28年間で47回、つまり1年に2回弱の生産枠改訂が行われた計算である。2000年のように年間4回も増産を決定した年もあれば、1986年、89年、92年、2001年のように1年の間に3回改訂されたことも珍しくない。最近でも2007年初めから2008年年央にかけて3回にわたり総会で増産が決議され、その後2008年後半には一転して2回減産が行われている。これらのことから2008年12月以降2年間もの間生産量の見直しが行われていないことの特異性が際立っていることがわかろう。
総会の開催頻度も今年は例年になく少ない。2008年は5回の総会が開かれている。それは上記のとおり増産及び減産を頻繁に取り決めたためであった。2009年も総会は4回開催されている。この年は生産量の改訂は一度も行われなかったが、不安定な市場の動きを見守るため3月、5月、9月及び12月の4回にわたって総会が開かれた。
ところが今年は3月と今回の2度だけで12月の予定を含めても年間開催数は3度である。これまで定例のように開かれていた5月(或いは6月)の臨時総会も今年はなかった。今年はOPECにとって極めて穏やかな年だった。創立50周年をそのような状況で迎えることができたOPECにとって今年はハッピーな年だと言えそうである。
(続く)
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