石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2011年版解説シリーズ:天然ガス篇(4)

2011-07-03 | その他

 

(注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf

 

 

3.世界の天然ガスの消費量(下)
(3)日本、中国及びインドの消費量の推移(1965~2010年)

(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-95dGasConsumpInJapanChinaIndia.pdf 参照)
 1965年の日本、中国及びインドの天然ガスの消費量はそれぞれ17億㎥、11億㎥、2億㎥と欧米に比べ非常に少なかった。1970年代に入り日本と中国はほぼ同じ様なペースで増加し、インドは1980年初めまで低調に推移した。1977年以降日本の消費量は急激に増え1979年には200億㎥を突破、更に1988年に400億㎥、1996年に600億㎥、2006年には800億㎥とほぼ10年で200億㎥ずつ増加した。

 一方中国は1980~90年代は年間200億㎥以下で推移し、90年代後半には一時インドにも追い抜かれた。しかし2000年以降は毎年驚異的に増加し、2000年の245億㎥から2005年にはほぼ2倍の468億㎥となった。さらに2009年には日本を追い抜き、2010年の消費量は1,090億㎥に達した。インドの消費量も1980年以降は順調に伸び、2010年には619億㎥を突破、日本と中国の6割強にまで成長している。

天然ガスは石油に比べてCO2や有害物質の排出量が少ない「環境に優しいエネルギー」として今後ますます需要が拡大することは間違いない。世界的にも新しいパイプラインやLNGの液化・運搬・受入設備が増強されている。また石油の可採年数が46年に対して天然ガスのそれは59年であり(本シリーズ石油篇及び天然ガス篇第1回参照)、天然ガスの開発と生産拡大の余地は大きく、今後も消費拡大のペースは続くものと思われる。

(4)主要国の生産量と消費量の差(1985~2010年)
 主要な天然ガスの消費国は日本やドイツをのぞき同時に主要な生産国でもある(前章参照)。これらの国の天然ガスの生産量と消費量を比べると、ロシアは生産が国内需要を上回り大きな輸出余力を有している一方、世界最大の天然ガス消費国の米国は近隣諸国からパイプライン或いはLNGとして不足分を輸入している。またかつては輸出国であったが現在では輸入国に転じた英国や、需要が拡大し天然ガスの輸入が急増している中国のような国もある。ここでは生産・消費の二大国米国とロシアに加え、英国、中国及びイランの5カ国について1985年から2010年までの生産と消費のバランス(輸出比率或いは自給率)を見ることとする。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-95eGasProdVsConsump.pdf 参照)

 1985年にはロシア(旧ソ連)は生産が4,659億㎥、消費が3,504億㎥であり、差し引き677億㎥の輸出余力があった。これに対し中国及びイランは生産と消費がバランスしていた。しかし米国は生産4,659億㎥、消費4,893億㎥であり、英国も生産397億㎥、消費518億㎥といずれも消費過多で不足分を輸入していた。
 
 その後、ロシアは生産が大幅に拡大したが国内消費は伸び悩み、その結果1990年以降は輸出余力が常に1,500億㎥以上に達した。一方米国は生産量が伸び悩み、国内消費の増加に追いつかないため需給ギャップは年々拡大し、1995年以降は純輸入量が1千億㎥を超えることが常態化、自給率は80%台前半に低下した。但し最近、シェールガスの商業生産が軌道に乗ったことにより需給ギャップは90%まで大きく改善している。

 英国の場合は1990年代前半までは生産が消費を下回っていたが、北海の生産が拡大した90年代後半は生産の1割強を輸出する余力が生まれている。但し北海の生産は減退が早く2004年には再び純輸入国に転落、その後需給ギャップは年々拡大している。2010年の同国の自給率は61%である。

 中国は長らく天然ガスの自給体制を維持しており、国内の生産量も1985年の129億㎥から1996年に200億㎥、2001年303億㎥に、そして2010年には968億㎥にまで増加している。しかし消費の拡大ペースはそれを上回っており、2007年には自給率が100%を割り純輸入国となった。その後需給バランスは急速に悪化し、2010年は生産量968億㎥に対し消費量は1,090億㎥となり自給率は89%に低下している。イランの場合は1997年までは国内消費をまかなう十分な生産量が確保されていたが、それ以後は生産が伸び悩み自給率が100%を切ることが多くなっている。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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