石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2011年版解説シリーズ:天然ガス篇(3)

2011-07-01 | その他

 

注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf

 

 

3.世界の天然ガスの消費量(上)
(1) 地域別・国別消費量
 2010年の世界の天然ガス消費量は3兆1,690億立方メートル(以下㎥)であった。地域別では欧州・ユーラシアが1兆1,372億㎥と最も多く全体の36%を占めている。これに次ぐのが北米(8,461億㎥、27%)であり、これら2地域だけで世界のほぼ3分の2の天然ガスを消費している。3番目に多いのがアジア・大洋州5,676㎥(18%)で、その他の地域は中東3,655億㎥、中南米1,477億㎥、アフリカ1,050億㎥であった。アフリカの天然ガス消費量は世界全体の3%で、欧州・ユーラシアの12分の1に過ぎない。(図「2010年地域別天然ガス消費量」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-95aGasConsumptionByRegion2010.pdf 参照)

 次に国別に見ると、最大の天然ガス消費国は米国であり、同国の2010年の消費量は6,834億㎥であった。これは全世界の22%に相当する。第2位はロシア(4,141億㎥、13%)、これに続くのがイラン(1,369億㎥)、中国(1,090億㎥)である。5位以下には日本(945億㎥)、英国(938億㎥)、カナダ(938億㎥)、サウジアラビア(839億㎥)、ドイツイ(813億㎥)、イタリア(761億㎥)が名を連ねている。(表「国別天然ガス消費量ベスト20(2010年)」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-95GasConsumpByCountry2010.pdf 参照)
 
(2)地域別消費量の推移(1965-2010年)
 1965年に6,509億㎥であった天然ガスの消費量は、2008年までの43年間常に前年を上回って増加している。1971年には1兆㎥、1991年に2兆㎥を超え、2008年にはついに3兆㎥の大台を超えた。

石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品と同様の現象がある。しかし天然ガスの場合は輸送方式がパイプライン或いはLNGの形であり、生産国と消費国が直結している点が石油とは異なっている。そしてこれら輸送施設を整備するために多くの時間とコストを必要とする反面、一旦設備が稼動すると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガスの消費量が過去43年間にわたり一貫して増加しているのはこのような天然ガスの特性によるものと考えられる。

 欧州・ユーラシア、北米、アジア・大洋州をはじめとする6地域の消費量の推移を見ると地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-95cGasConsumptionByRegion1965-2010.pdf参照)。1965年の世界の天然ガス消費量の71%は北米、24%は欧州・ユーラシアであり、両地域だけで世界全体の95%を占めており、その他のアジア・大洋州、中南米、中東及びアフリカ地域は全て合わせてもわずか5%にすぎなかった。その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州・ユーラシア地域は急速に消費が拡大し、1981年には北米を追い抜いている。そして1980年台半ばから1990年初めまでは世界全体の消費の50%を同地域が占めていた。同地域の消費量は2001年に1兆㎥を超えた後、2010年は1兆1,372億㎥と横ばい状態である。これに対してアジア・大洋州の消費量は急速に伸びているため、欧州・ユーラシア地域の世界全体に占める割合は徐々に低下し2010年は36%となっている。

 アジア・大洋州の1965年の消費量は58億㎥であり中南米(142億㎥)、中東(102億㎥)より少なかったが、1980年頃から増加傾向が顕著となり特に90年以降は急激に増大している。同地域の2000年の消費量は2,908億㎥であり世界全体の12%を占めた。そして2010年は5,676億㎥でシェアも18%に上昇している。

 北米、欧州・ユーラシア地域とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送設備の拡充が消費の増大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1965年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。そしてアジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が拡大している。

 (続く)

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