石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2011年版解説シリーズ:天然ガス篇(5)

2011-07-06 | その他

 

注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf

 

 

4.世界の天然ガス貿易(その1):パイプラインによる輸出入
 パイプラインによる天然ガス貿易の歴史は古く、現在はユーラシア大陸(ロシア・中央アジア~ヨーロッパ諸国)及び北米大陸(カナダ~米国)を中心に世界各地で広く行なわれている。2010年の貿易量は世界全体で6,776億立方メートル(以下㎥)であり、関与している国の数は80カ国に達する。これらの国の中には米国とカナダのように相互に輸出または輸入を行なっているケースやロシア或いはドイツのように他国産の天然ガスを中継貿易で第三国に輸出しているケースもある。

(1) パイプラインによる天然ガスの輸出国とその量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-96aGasNetExportByPipeline2010.pdf参照)
 パイプラインによる天然ガスの輸出量が最も多い国はロシアであり、2010年の輸出量は1,538億㎥であった。なおロシアはカザフスタン、ウズベキスタンなど中央アジアの複数の国から天然ガスを受け入れており(輸入)、上記輸出量はそれらを差し引いたNETの輸出量である(その他の国についても同様)。

ロシアに次いで多いのがノルウェーの959億㎥、第3位はカナダ(715億㎥)である。これら3カ国でパイプラインによる輸出量の5割を占めている。この3カ国に続いてアルジェリア(365億㎥)及びオランダ(364億㎥)がほぼ同量を輸出している。北アフリカに位置するアルジェリアは地中海を横断する海底パイプラインによって天然ガスをフランス、スペインなどのヨーロッパ諸国に輸出している。

6位から8位はトルクメニスタン(197億㎥)、カタール(192億㎥)、ウズベキスタン(136億㎥)である。このうちトルクメニスタンとウズベキスタンは中央アジアの産ガス国である。また中東のカタールはロシア、イランに次ぐ世界第3位の埋蔵量を誇っており(第1章「世界の天然ガス埋蔵量」参照)、天然ガスを液化したLNGとして日本などに輸出してきた。しかし近隣のUAE、オマーンの天然ガス需要が強いため、最近3カ国を結ぶ「ドルフィン・パイプライン」が建設され、両国への天然ガスの輸出が始まっている。UAE、オマーンは共に石油及び天然ガスを生産しているが、発電及び造水プラントの燃料としての天然ガスが自国産だけでは不足するためカタールから輸入しているのである。

(2) パイプラインによる天然ガスの輸入国とその量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-97aGasNetImportByPipeline2010.pdf参照)
 2010年のパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多いのはドイツの781億㎥であった。これに次ぐのがイタリア(661億㎥)、米国629億㎥である。なお輸入量についても上記(1)の輸出量と同様NETの数値である。因みに米国の場合はカナダ及びメキシコから合わせて933億㎥を輸入しているが、同時にこれら2カ国に303億㎥を輸出している結果、NETの輸入量が629億㎥となっているのである。これら3カ国に次いでパイプラインによる天然ガスの輸入量が多いのは、フランス(334億㎥)、ウクライナ(330億㎥)、トルコ(281億㎥)である。

(3) パイプラインによる天然ガス輸出の推移(2006年~2010年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-99aGasPipelineTrade06-10.pdf参照)
 2006年に5,371億㎥であったパイプラインによる輸出量は、2007年には5,497億㎥に増え、その後も5,873億㎥(2008年)→6,338億㎥(2009年)→6,776億㎥(2010年)と毎年増え続け、特に2008年から2010年までは年率7%前後の高い伸びを見せている。

 国別で見るとロシアの過去5年間の輸出量は1,515億㎥(’06)→1,475億㎥(’07)→1,544億㎥(’08)→1,765億㎥(’09)→1,865億㎥(’10)であった(注、輸出量は上記(1)と異なりGROSSの量)。同国は5年間を通じて第2位のノルウェーを大きく引き離しトップであり、世界全体に占める割合は一定して27%前後であった。ノルウェーの輸出量も毎年アップしているが近年の伸び率は低く世界に占めるシェアは下落傾向である。カナダは2010年の輸出量が世界3位であるが、過去5年間の輸出量は変動が大きく、998億㎥(’06)→1,073億㎥(’07)→1,032億㎥(’08)→922億㎥(’09)→924億㎥(’10)であった。特に2008年、2009年の落ち込みが大きい。これは輸出先の米国でシェールガスの開発生産が本格化し、米国の天然ガス自給率が上がったためと考えられる。(第2章(3)「生産量が増加している国、減少している国」参照)

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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