石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2011年版解説シリーズ:天然ガス篇(7)

2011-07-10 | その他

(注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf

 

6.世界の天然ガス貿易(その3):パイプラインとLNGの比較

(1)天然ガス貿易の推移(1997~2010年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-91GasTradePipelineVsLng(1997-2010).pdf参照)
 パイプライン及びLNGによる天然ガスの合計貿易量は1997年にはパイプラインによるものが3,220億立方米(以下㎥)、LNGが1,110億㎥の合計4,330億㎥であり、パイプラインとLNGの比率はほぼ3:1の割合であった。この後、天然ガスの貿易は年率5%を超える伸びを示し、2000年には5,000億㎥、2005年には7,000億㎥、2008年に8,000億㎥を超え、2010年には1兆㎥にあと一歩の9,750億㎥に達している。1997年当時に比べ天然ガス貿易全体では2.3倍に増加しているが、近年はLNGによる貿易の伸びが大きく2010年には全貿易量に占めるLNGの比率が3割を超えた。

(2)主要な天然ガス輸出国(2010年)
 パイプラインとLNGを合わせた天然ガスの輸出が最も多いのはロシアの1,672億㎥(世界シェア17%)であり、第2位はノルウェー(1,006億㎥、シェア10%)であった。第3位の輸出国はカタールであり、輸出量は949億㎥(内訳、パイプライン192億㎥、LNG758億㎥)である。同国は昨年末までに大型LNG設備が相次いで完成し、英国向けの輸出量が飛躍的に増大した(詳細は下記4項参照)。
第4位はカナダの695億㎥で全量米国向けのパイプライン輸送によるものである。第5位のアルジェリアは558億㎥(内訳、パイプライン365億㎥、LNG193億㎥)を輸出している。同国はパイプラインとLNG輸出のバランスが取れており、他国の輸出がパイプライン又はLNGのいずれかに偏重していることに比べ特徴的である。ロシアからアルジェリアまでの上位5カ国で天然ガスの全貿易量の半分を占めている。

6位以下10位までは、インドネシア413億㎥(パイプライン99億㎥、LNG314億㎥)、オランダ364億㎥(全量パイプライン)、マレーシア291億㎥(LNG305億㎥、パイプラインで一部輸入)、ナイジェリア240億㎥(全量LNG)となっている。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-96cGasExport2010(Pipeline+Lng).pdf 参照)
(注)天然ガス貿易では米国のようにカナダとの間で相互に輸出と輸入を行っている国、或いはロシアのように隣国のカザフスタンから天然ガスを受け入れ(輸入)、これを再輸出している国等がある。従って本項の輸出量はそれらを相殺したNETの輸出量である。(次項の輸入量についても同じ)

(3)主要な天然ガス輸入国(2010年)
 パイプラインとLNGを合わせた天然ガスの輸入が最も多いのは日本の935億㎥で全量LNGである。続く2位のドイツは781億㎥であり、こちらは全量パイプラインである。3位、第4位はイタリア及び米国でありそれぞれの輸入量は752億㎥(パイプラインによる輸入661億㎥、LNG輸入91億㎥)及び735億㎥(パイプライン629㎥、LNG106億㎥)である。(なお米国のGROSS輸入量はこれよりも大きい。上記(2)注参照)

5位から10位までは、5位フランス(PL 334億㎥、LNG 139億㎥、Total 474億㎥)、6位韓国(全量LNG444億㎥)、7位英国(PL 193億㎥、LNG 187億㎥、Total 380億㎥)、8位トルコ(PL 281億㎥、LNG 79億㎥、Total 360億㎥)、9位スペイン(PL 77億㎥、LNG 275億㎥、Total 353億㎥)、10位ウクライナ(全量PL 330億㎥)の順となっている。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-97cGasImport2010(Pipeline+Lng).pdf 参照)

(4)拡大する輸出入量と多様化する貿易ルート(カタールと中国の例)
 天然ガスの需要は拡大の一途をたどっており、これに伴い世界各国でLNGの生産・出荷設備や受入設備の新増設が行われ、或いは国境をまたがるパイプラインが建設されつつある。この結果、天然ガスの貿易量は毎年大きく増加しており、また天然ガス貿易に関与する国も着実に増加している。ここではLNG輸出国として目覚ましい躍進を遂げているカタールと、その一方国内産のガスが不足し毎年輸入量が急増している中国について、それぞれ過去5年間(2006年~2010年)の輸出(入)量及び取引相手国の推移を取り上げてみよう。

(i) カタールの天然ガス輸出とその相手国
 2006年に311億㎥であったカタールの天然ガス輸出量は5年後の2010年には3倍の949億㎥に達している。この間の増加率は年間20%以上であり、2010年の場合は前年比40%と言う驚異的な増加率を示した。
 同国ではここ数年相次いで新規LNG生産出荷設備が立ち上がり、かねてから同国が標榜していたLNG年産7,700万トン体制が昨年末に完成した。これに伴いLNGの輸出先と輸出量が大幅に増加している。輸出相手国の数は2006年の6カ国から2010年には3倍近い16カ国に増えている。新規相手国の殆どはスポット輸出であるが、中には英国のように長期契約の国もある。2010年の英国へのLNG輸出は139億㎥に達し日本向け(102億㎥)を上回っている。
 またこの間にカタールとUAE及びオマーンを結ぶパイプライン(ドルフィン・パイプライン)も完成、生ガスの輸出が始まった。この結果2010年のUAE向け輸出量は174億㎥となり最大の輸出相手国となっている。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-99bQatarGasExport06-10.pdf参照)

(ii) 中国の天然ガス輸入とその相手国
 中国は長らく天然ガスの自給体制を維持していたが、消費量が急増したため2007年には生産量が消費量を上回り天然ガスの純輸入国となっている。その後も同国の天然ガス需要は大幅に増加しているため、輸入量は44億㎥(07年)→76億㎥(09年)→164億㎥(10年)と激増している。このうちLNGについてはオーストラリア、インドネシア、マレーシア、カタールから長期契約で輸入すると同時に、スポット物を積極的に買い付けており2010年の輸入相手先は13カ国に達している。また中央アジアのトルクメニスタンと中国を結ぶパイプラインも2010年に完成、同国からの輸入量は36億㎥でオーストラリアに次ぐ第2位の輸入相手国となっている。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-99cChinaGasImport06-10.pdf参照)

(天然ガス篇完)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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