石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ニュース解説:八方丸く収まった3千万B/D(12月OPEC総会)(2)

2012-01-07 | OPECの動向

(注)本シリーズ(1)~(4)はHP「マイ・ライブラリー:前田高行論稿集」で一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0213OpecMeetingDec2011.pdf

 

2.満足したサウジアラビア、面子を保ったイラン
 OPECが生産枠を最後に見直したのは2008年12月のことでありイラクを除く11カ国で2,485万B/Dという数値であった。その後2009年以降、世界の石油需要は堅調に推移し、OPEC加盟国はいずれの国も生産割当を大幅に上回る生産を続けてきた。更に増産にもかかわらず価格は2008年末の45ドル(WTI原油)から2年後の今年初めには2倍の90ドルに上昇した。高い生産量と価格上昇によりOPEC各国の石油収入は大幅に増加しいずれの加盟国もオイルブームに沸いたのである。高騰する価格を見かねたIEAはOPECに更なる増産を求めた。

 サウジアラビアは6月OPEC総会で目標生産量を3,030万B/Dとすることを提案した。クウェイト、及びUAEはこれに同調したが、イラン、ベネズエラなど従来から強硬派と呼ばれた国々が反対した。投機マネーが流入していることが高値の一因であり、世界景気の悪化で石油需要は落ち込む恐れがある中で増産すれば石油価格が暴落するというのが彼らの言い分であった。こうして6月総会は決裂したのである。

 サウジアラビアは総会後、増産に踏み切りUAEとクウェイトも呼応した。2010年のサウジアラビアの年間平均生産量は817万B/Dであったが、今年11月には1,000万B/Dに達した 。OPECのレポートによると同月の11カ国の生産量は2,769万B/Dであり、2008年に取り決めた生産枠(2,485万B/D)を284万B/D、11%もオーバーしている。これにイラクを加えたOPEC全体の生産量は3千万B/Dを超えているのである 。その間価格は不安定な動きを示しているものの現在も90ドル台(WTI原油)を維持している。増産しても価格が急落しなかったことでサウジアラビアの方針は間違っていなかったことが証明された形である。6月総会では記者団に憤懣やるかたない表情で語ったサウジアラビアのナイミ石油相も今回の結果には満足したようである。

 6月総会でナイミ石油相が不満を漏らしたのは増産の主張が通らなかったことだけではなく、議長国イランの議事運営が稚拙であったこともその一因であった。国内で権力闘争の様相を呈しているイランはアハマドネジャド大統領が今年初め石油相を更迭、自らが石油相を兼務し6月総会には大統領自身が出席するものと見られていた。総会直前に漸くアリバルディ新石油相が任命されたが、彼の前職は国内オリンピック委員会の責任者であり、石油にはずぶの素人である。新石油相の議長のもとでOPEC総会は紛糾し決裂と言う最悪の結果に終わった。同総会では従来の慣例に則り年末の定例総会を議長国(今年の場合はイラン)で開催する手はずであったが、結局今回の12月総会はOPEC事務局のあるウィーンで開催されることになった。もし今回の総会も決裂すれば議長国としてのイランの面目は丸つぶれであり、イランもこの点は十分認識していたと思われる。

 6月総会の二の舞を防ぐべくOPEC事務局は事前に世界の石油需給と価格動向に関する入念な資料を準備し、サウジアラビアが主張した通り加盟12カ国による3千万B/D生産体制が妥当であるとの意見を具申した。失敗を許されない議長国イランは事務局のこの作戦に乗った訳である。こうして今回の総会でサウジアラビアは6月総会で主張し、その後実行した増産が晴れて公認された訳であり、自らの主張の正しさと、短期間で1千万B/Dまで生産アップできる実力を見せつけたことで大いに満足した。そしてイランは議長国として総会を無事乗り切って面子を保った。OPEC穏健派サウジアラビアと強硬派イラン双方の顔が立った訳である。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(1/1-1/7)

2012-01-07 | 今週のエネルギー関連新聞発表

1/4 JXホールディングス    2012年 社長(高萩 光紀) 年頭挨拶について http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2011/20120104_01_1050061.html
1/4 出光興産    当社社長 中野和久 年頭の挨拶について http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2011/120104_2.html
1/4 コスモ石油    2012年木村社長 年頭挨拶要旨 http://www.cosmo-oil.co.jp/press/p_120104/index.html
1/4 東燃ゼネラル石油    本日の一部報道について http://www.tonengeneral.co.jp/apps/tonengeneral/pdf/2012-01-04_1ja.pdf
1/4 国際石油開発帝石    エジプト東部砂漠ウエスト・バクル鉱区の権益売却について(お知らせ) http://www.inpex.co.jp/news/pdf/2012/20120104-a.pdf
1/5 昭和シェル石油    社員への年頭挨拶 http://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2012/0105.html
1/5 石油連盟    年頭所感(会長コメント) http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2012/01/05-000524.html
1/5 Shell    Production resumes at Bonga and EA http://www.shell.com.ng/home/content/nga/aboutshell/media_centre/news_and_media_releases/2012/bonga_01052012.html
1/6 丸紅    米国テキサス州・イーグルフォード・シェールオイル・ガス開発事業に参画 http://www.marubeni.co.jp/news/2012/120106.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする