石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

米国の原油生産、二年連続で世界一:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ石油篇(17)

2019-07-25 | BP統計

(注)本シリーズ(1~18回)は「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0474BpOil2019.pdf

 

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

5.世界の石油精製能力(続き)

(第二次オイルショック以降一貫して設備を削減した日本、過去最高となった米国の精製能力!)

(4)主要国の石油精製能力の推移(1970年~2018年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-G03.pdf 参照)

  世界の石油精製能力上位10カ国のうちここでは米国、中国、インド、日本、サウジアラビア及びドイツの6カ国について1970年から2018年までのほぼ半世紀の石油精製能力の推移を追ってみる。

 

現在世界最大の石油精製能力を有する米国の1970年のそれは1,286万B/Dであり、この時既に他国を圧倒する1千万B/Dを超える設備を有していた。この年の日本(350万B/D)は米国の4分の1、ドイツ(264万B/D)は5分の1であり、サウジアラビア(68万B/D)、中国(61万B/D)、インド(41万B/D)に至っては米国の20分の1から30分の1程度にすぎなかった。

 

米国は1970年代に精製設備を急速に増強し、1980年には1,862万B/Dになったが、1980年代前半には逆に能力が急減、1985年から1995年までの10年間は1,500万B/D台で低迷した。しかし1995年以降は再び精製能力を増強、2018年には過去最高の1,876万B/Dに達している。

 

米国とは対照的に日本とドイツは第2次オイルショック(1979年)直後の1980年に日本564万B/D、ドイツ342万B/Dに達したが、その後両国はいずれも設備能力を縮小し続け、2018年は日本334万B/D、ドイツ209万B/Dになっている。

 

一方、中国は能力拡大の一途をたどり、1970年の61万B/Dから1985年には235万B/Dに達している。1990年以降は拡大のペースが一段と高まり、316万B/D(1990年)→439万B/D(1995年)→591万B/D(2000年)→846万B/D(2005年)→1,232万B/D(2010年)→1,502万B/D(2015年)と驚異的なスピードで精製能力を増強、2000年には日本を追い抜いている。しかしここ数年は能力拡大のペースが鈍化しており、2018年の精製能力は1,566万B/Dとほぼ横ばいの状況である。精製能力1位の米国と同2位の中国の差は300万B/D強である。

 

インドの場合も1970年の精製能力は中国とほぼ肩を並べる41万B/Dにすぎなかったが、1980年代後半に100万B/Dを超え、2000年には222万B/Dに達してドイツに並んだ。さらにその後も能力は増加し2015年には日本を追い抜き、2018年の精製能力は497万B/Dとなり日本との格差が開いている。インドは2000年から2018年までの間に能力を倍増しており、同じ期間内の日本が3割強削減しているのとは対照的である。日本と中国・インドの差は経済の成熟度の差であると同時に、日本が省エネ技術により石油製品の消費を抑えているのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあるためと考えられる。

 

OPEC(石油輸出国機構)の盟主であるサウジアラビアは原油の輸出国と見られているが、精製設備増強にも熱心である。これは原油の付加価値を高めるため石油製品として輸出し、或いは中間溜分をポリエチレンなどの石化製品として輸出することを狙っているためである。同時に国内では急増する電力及び水の需要に対応するため発電所或いは海水淡水化装置用の燃料が必要とされ、また生活水準の向上によるモータリゼーションのためのガソリンの需要が増大する等、石油製品に対する国内需要が急速に拡大している。この結果同国の精製能力は1970年の68万B/Dから70万B/D(1975年)→151万B/D(1985年)→210万B/D(2005年)と年々増強され2018年には284万B/Dに達している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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