3.2018年1月以降の格付け推移
ここでは2018年1月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。
(先進国は格付け不変、新興経済国との格差拡大!)
(1) 世界主要国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)
先進国の中ではドイツが過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国は米国よりさらに1ランク低い格付けAAを過去3年間続けている。中国と日本の格付けは3年間同じA+で推移している。
新興経済国のメキシコ、インド、南アフリカ及びブラジルの2018年1月の格付けは、メキシコが投資適格のBBB+であり、インドは投資適格で最も低いBBB-であった。メキシコは2020年上期にBBBに格下げされている。これに対しインドは今年1月現在もBBB-である。因みにS&PはBBBを「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」と定義付けている。
南アフリカとブラジルの2018年1月の格付けはそれぞれBB+及びBBであり共に投資不適格であった。両国の格付けは同年上期に共に1ランク低下し南アフリカはBB、ブラジルはBB-となっている。その後2019年下期まで格付け変化は無かったが、2020年上期に南アフリカがBB-に下がりブラジルと並び現在に至っている。格付けBBの定義は「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされている。
3年間を通して見ると、先進国間の格付けは変わらない一方、新興経済国は格付けが下がる傾向が見られ、先進国との格差が広がっている。
(上位のアブダビ、カタール、クウェイト、大きく離れるオマーンとバハレーン!)
(2)GCC6カ国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)
GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2018年1月時点ではUAE(アブダビ)及びクウェイトの格付けが最も高いAAであり、これに続きカタールがAA-に格付けされていた。サウジアラビアはこれら3カ国より低いA-であり、オマーンは投資不適格のBB+であった。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がわずかなバハレーンのソブリン格付けはB+にとどまっていた。
経済力の弱いバハレーンは現在もB+にとどまったままである。オマーンは格付けの下落が激しく2018年上期にBBに格下げされ、さらに昨年には上期・下期と2期連続で格下げされた結果、今年1月現在ではバハレーンと同じB+なっている。格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い。」とされており、オマーンとバハレーンの経済には不安感がある。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
ここでは2018年1月以降現在までの世界の主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。
(先進国は格付け不変、新興経済国との格差拡大!)
(1) 世界主要国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)
先進国の中ではドイツが過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国は米国よりさらに1ランク低い格付けAAを過去3年間続けている。中国と日本の格付けは3年間同じA+で推移している。
新興経済国のメキシコ、インド、南アフリカ及びブラジルの2018年1月の格付けは、メキシコが投資適格のBBB+であり、インドは投資適格で最も低いBBB-であった。メキシコは2020年上期にBBBに格下げされている。これに対しインドは今年1月現在もBBB-である。因みにS&PはBBBを「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」と定義付けている。
南アフリカとブラジルの2018年1月の格付けはそれぞれBB+及びBBであり共に投資不適格であった。両国の格付けは同年上期に共に1ランク低下し南アフリカはBB、ブラジルはBB-となっている。その後2019年下期まで格付け変化は無かったが、2020年上期に南アフリカがBB-に下がりブラジルと並び現在に至っている。格付けBBの定義は「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある。」とされている。
3年間を通して見ると、先進国間の格付けは変わらない一方、新興経済国は格付けが下がる傾向が見られ、先進国との格差が広がっている。
(上位のアブダビ、カタール、クウェイト、大きく離れるオマーンとバハレーン!)
(2)GCC6カ国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)
GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2018年1月時点ではUAE(アブダビ)及びクウェイトの格付けが最も高いAAであり、これに続きカタールがAA-に格付けされていた。サウジアラビアはこれら3カ国より低いA-であり、オマーンは投資不適格のBB+であった。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がわずかなバハレーンのソブリン格付けはB+にとどまっていた。
経済力の弱いバハレーンは現在もB+にとどまったままである。オマーンは格付けの下落が激しく2018年上期にBBに格下げされ、さらに昨年には上期・下期と2期連続で格下げされた結果、今年1月現在ではバハレーンと同じB+なっている。格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い。」とされており、オマーンとバハレーンの経済には不安感がある。
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