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http://mylibrary.maeda1.jp/0544WbDoingBusiness.pdf
9月16日、世界銀行は毎年恒例の’Doing Business Report‘(「ビジネス環境ランク」)を今年は見送ると発表、関係者を驚かせている[1]。「ビジネス環境ランク」は世界の200近い(2020年版の場合は190)国あるいは地域のビジネス環境をランク付けしたものであり、当該国・地域でビジネス活動を行う場合の難易度を知る目安になるとして世界で広く利用されている。毎年12月に発表され筆者は2008年以来ブログで紹介を続けてきた[2]。しかし2021年版については昨年12月以降半年以上も発表が遅れていたため不審に思っていたところ、今回世界銀行から同年版の発表を見送る旨の発表があった。またこれに合わせて外部の法律事務所WILMERHALEによる内部調査結果が公表された[3]。
不正の概要
WILMERHALEの世銀内部聞き取り調査によれば、2018年版の原案では前年よりランクが下がるとされていた中国が世銀上層部にランクの見直しを働きかけ、一部データを改ざんすることで前年と同様のランクを維持させたと言うもので、報告書では当時世銀の最高経営責任者であったゲオルギエワ現IMF専務理事が直接関与したと明言している。
また2020年版では12月の発行に先立つ同年9月の原案で、環境改善度が高い国としてヨルダンをトップ、サウジアラビアを2番目としたことに対してサウジアラビアが強い不満を表明、世銀トップの判断で順位を入れ替えたとされる。その他UAE及びアゼルバイジャンについてもデータに手心が加えられたと断定している。
(続く)
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荒葉一也
[1] World Bank to not release 2021’s Doing Business report over alleged irregularities
2021/9/17 Ahram Online
[2] 最近3か年については下記参照。
2018年版:http://mylibrary.maeda1.jp/0427MenaRank13.pdf
2019年版:http://mylibrary.maeda1.jp/0457MenaRank13.pdf
2020年版:http://mylibrary.maeda1.jp/0487WorldRank3.pdf
[3] World Bank Statement:
World Bank Group to Discontinue Doing Business Report
WILMERHALE調査報告書:
Investigation of Data Irregularities in Doing Business 2018 and Doing Business 2020