石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ10(消費篇2)

2022-07-22 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(2) 1970~2021年の消費量の推移

(50年間でアジア・大洋州のシェアが15%から38%に急拡大!)

(3-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02a.pdf参照)

 1970年の全世界の石油消費量は4,540万B/Dであったが、5年後の1975年に5千万B/D台に、そして1980年には6千万B/D台と5年ごとに大台を超える急増ぶりであった。その後1980年代は横ばい状態であったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、1995年には7千万B/Dを超えた。そして2000年代前半には8千万B/D、2014年に9千万B/Dを突破して2019年には過去最高の1億B/D目前に達した。しかし2020年はコロナ禍の影響で消費が急減、2021年は多少回復したものの9,410万B/Dにとどまった。

 

消費量を地域別にみると、1970年には北米及び欧州地域の消費量はそれぞれ1,660万B/D、1,330万B/Dであり、この2地域だけで世界の石油消費の3分の2近くを占めていた。同年のアジア・大洋州の世界シェアは15% (670万B/D)であり、その他のロシア・中央アジア、中東、中南米、アフリカは4地域合わせても19%に過ぎなかった。その後はアジア・大洋州の消費の伸びが著しく、1980年には1千万B/Dを突破、1990年代前半には欧州を追い抜き、2000年の消費量は2,120万B/Dに達した。さらに2006年には北米をも上回る世界最大の石油消費地域となり、2021年の消費量は世界全体の38%を占める3,580万B/Dとなっている。

 

欧州地域は1970年に1,330万B/Dであった消費量が1980年には1,580万B/Dまで増加している。しかしその後は減少傾向をたどり1990年から2010年までの20年間はほぼ1,600万B/D前後で横ばい状態となった。2010年代に入ると減少傾向を示し、2021年の石油の消費量は1,350万B/Dで世界全体に占める割合は1970年の29%から14%に半減している。

 

北米地域については1970年の1,660万B/Dから1980年には2千万B/Dまで伸び、1980年代は需要が停滞した後1990年代に再び増勢を続け2005年には2,490万B/Dに達した。その後は減少を続け2021年は2,230万B/Dとなっている。これはシェールガスの開発生産が進み、エネルギーの消費構造が石油から天然ガスに移ったためと考えられる。 (天然ガスの生産・消費については次項参照)。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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SF小説:「新・ナクバの東」(29)

2022-07-22 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

 

2022年7月

 

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

 

29. バーチャル管制:砂漠に消えた二番機()

 

快晴にもかかわらず「ブルジュ・ハリーファ」は霞んで見えた。大都会ではスモッグのため地上が霞むことは珍しくないが、超高層ビル全体がかすんでいる。「マフィア」は魔法の絨毯に乗って千夜一夜の不思議な世界を覗いたような気持ちで眺めていた。その大都会のすぐ先はもう砂漠である。人々はその砂漠を「ルブ・アルハリ」と呼ぶ。アラビア語で「空白の四分の一」を意味する広大な砂漠である。アラビア半島の四分の一を占め、ごく最近まで満足な地図すら無かった空白地帯ということから名付けられたのである。

戦闘機が向かうその砂漠は今、地上と空が一体となった赤茶けた幕に覆われ地平線が見えない。そしてその幕が海岸線にひしひしと近づきつつあった。この時期特有の「砂嵐」の襲来である。超高層ビルがかすんで見えたのはその前兆だったのだ。2機の戦闘機はその砂嵐に突っ込もうとしている。こんな砂漠のど真ん中にジェット機が着陸できるような滑走路があるのだろうか?「マフィア」は恐怖と不安に駆られて先導の米軍機に行き先を確かめたい衝動に駆られた。しかしこちらからの交信は禁じられており、先導する米軍機はまるで何事もないかのように高度を下げつつ砂嵐の中へと突き進んでいった。「マフィア」は観念し黙って追走した。

 

砂嵐の中に突入すると猛烈な逆風のため機体は木の葉のように揺れ、真昼間と言うのに夕暮れ時のように暗くなり時々先導の米軍機を見失うほどであった。高度計が地上まで数百メートルを示したその時、先導機から呼びかけがあった。

「この先に誰も知らない米軍の滑走路があり、貴機はそこに緊急着陸してもらう。ここから先は基地の地上管制官が誘導するので周波数を○○ヘルツに切り替えよ。当機は所属基地に戻る。グッド・ラック。」

 

言い終えた米軍機は機首を左斜め上方に向けて「マフィア」の視界から飛び去っていった。入れ替わりに今度は管制官の声が飛び込んできた。

 

「こちら管制塔。こちら管制塔。貴機がこちらに向かっているのをレーダーで確認した。着陸準備体制に入りそのまま直進せよ。」

 

砂嵐で視界は殆どゼロのため管制官の誘導だけが頼りである。「マフィア」は微塵も疑わず管制官の指示に従ってずんずんと高度を下げた。

 

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

 

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

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