(英語版)
(アラビア語版)
2023年3月
Part III キメラ(Chimera)
65.隕石に乗って地球にやってきたウィルス(3)
一方、アラビアンオリックスはその優美な肢体が災いし「ヒト」によって捕獲され個体数が減少、ついには絶滅寸前に至った。すると「ヒト」は種の維持と言う大義名分を掲げてアラビアンオリックスを人為的に保護し始めた。
「ヒト」が特定の種の保護に乗り出したのは自らが地球の自然界の王者にのし上がり、恐れるものが無くなったためである。しかし保護の対象はあくまで「ヒト」の価値基準に沿ったものであり、「ヒト」に害悪を及ぼすものは根絶され、無害で価値があると認められたものだけが種の保存の対象になるのであった。アラビアンオリックスは「ヒト」に保護対象と認められたのである。こうしてギャラクシーはとりあえず宿主アラビアンオリックスの体内で生き続けているという訳である。
しかしギャラクシーには自ら気が付いていない重大な欠陥があった。それは棲みかを宿主の生殖器官にしたことであった。ウィルスの生存そのものが宿主の生殖機能を徐々に衰えさせていたのである。アラビアンオリックスが絶滅に向かったのは、外敵の存在だけでなくウィルス自身の問題でもあった。もちろんウィルスはそのことを知る由もなかったが、自己の生存領域が狭まっていくことを本能的に察知していた。
ギャラクシーは新しい宿主を探し始めた。その探索は試行錯誤の繰り返しであった。増殖したギャラクシーは経口感染と言う形で次々と転移を試みた。目指す宿主の生存力、繁殖力が強ければ強いほど未来は明るい。現代の究極の宿主。それは間違いなく「ヒト」である。ギャラクシーは「ヒト」に転移する機会をうかがった。
(続)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html