(英語版)
(アラビア語版)
2023年2月
Part III:キマイラ(Chimaira)
66. 最凶の宿主ヒトへの侵入(1)
ギャラクシーがアラビアンオリックスの生殖器官の内部で増殖活動を行っていたころ、オリックスの体外の自然環境は大きくうねりながら変化していた。その最大の要因は「ヒト」の急速な進化であった。
「ヒト」は猛獣に比べ闘争能力に劣り、敏捷な動物に比べて逃走能力が低かった。そのため肉食動物の犠牲になることが少なくない。しかしそのような弱い「ヒト」を救ったのが、他の動物に比べ異常ともいえるほど発達した頭脳である。これによりヒトは互いのコミュニケーションが容易になり、さらに二足歩行の能力を獲得したことにより、手と頭脳を使って自ら「火」を熾し、さらには道具を発明し利用することができるようになった。
アフリカで誕生した「ヒト」は陸路を伝い、海を舟で横断することにより地球の各地に生存圏を広げ始めた。「ヒト」は動物も植物も食する雑食生物である。彼らは森林を焼き払い穀物を栽培した。そして動物を無差別に殺戮して食料とし、それら野生動物の中から牛や馬、鶏、豚、家鴨などを家畜として人工飼育し、農耕あるいは食料品として利用した。こうして「ヒト」は無秩序に増殖していった。
厳しい自然環境を克服する術を心得た「ヒト」は砂漠のアラビア半島でも厳しい環境をものともせずに定住した。彼らは狩猟で動物を狩り、また限られた水量のオアシスを利用してデーツなどの食物を栽培した。
「ヒト」の足よりも数倍早いオリックスに対しては、彼らは藪からオリックスを追い出す追い子、四方八方に逃げようとするオリックスを囲い込む囲い手、そしてオリックスより数倍も速い弓矢を使って最後のとどめを刺す射手、それぞれの共同作業によりオリックスの肉を獲得した。
オリックスは「ヒト」にオアシスの水飲み場を奪われ、狩の犠牲になることでその個体数は徐々に減少していった。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html